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2019年08月15日

★大丈夫





あきえちゃんは 近所に住む92歳の車椅子の女性だ

会うと「おっ! あきえちゃん 生きてるか?」

そう僕が冗談を言うと

「かろうじて息はあるわよ」と笑わせてくれる。

長野県の生まれで 早いうちに両親を亡くし

年の離れた兄が あきえちゃんと

弟の面倒を見てくれたそうだ。

一番上のお兄さんは変わった名前で

大丈夫と書いて「ますらお」と読むのだと

あきえちゃんが教えてくれた。

「プロレスラーみたいな名前だな」そう僕が言うと

あきえちゃんが笑いながら

「優しい兄でね 私たちの面倒をよく見てくれたのよ

私と弟のために親代わりに一生懸命働いてくれてね

まだ若いから遊びにだって行きたかったろうに・・

子供の頃 私が可愛い下駄を見つけてね

兄さんに 欲しい 欲しいと駄々をこねたのよ。

そしたら兄さんが あきえはしょうがないなと言って

下駄を買ってくれたの

はなおの赤い下駄を

お金も無かったのに買ってくれたのよ・・・

あの時は わがまま言って

兄さんに悪かったって思うのよ。」

そう言って あきえちゃんが涙ぐんだ。 

その大丈夫さんが 東京生まれの女性と結婚したそうだ

きれいな女の人で 洋服を作ってくれたり

おいしいご飯を作ってくれたり

母親代わりにあきえちゃん達の面倒を見てくれたそうだ

ある日お嫁さんが 洗濯物を庭で干しているとき

縁側で寝転んでいたあきえちゃんが

お嫁さんに聞いたそうだ

「ねえ お姉さん 何で貧乏で親もいない私達のところにお嫁に来たの?」

するとお嫁さんがこう答えたそうだ

「妹や弟のために一生懸命働いている大丈夫さんを見ていたら

何とかしなくっちゃと思ってね

ほっとけなくなっちゃったの」と

物干し竿の向こう側から笑顔で答えたそうだ。

「あの時 お姉さんがそう言って笑った顔

今でも忘れられないわ」

そうあきえちゃんが言った。

まるで その時の情景が見えたような気がして

僕は 胸がじーんと熱くなった

「あきえちゃん ますらおっていい名前だよな

なんたって大丈夫って書くんだからよ

そのお陰で あきえちゃんも弟も

親もいないのに大丈夫だったんだもんな」

そう僕はあきえちゃんの方も向かずに

ぶっきらぼうに言った。

「本当に そのとうりよ ほんとそう」

あきえちゃんが言った。




















  


Posted by ★ニヌファ at 07:54Comments(0)★日々の雑談
 

2017年09月21日

★ 合図




























愛犬のニヌファが亡くなって9年がたつ


今でも彼のことを思い出さない日はない


散歩に行った夕暮れの海岸で


休日の家のベランダで


洗濯物を干しながら


職場の屋上で空を見上げながら


ニヌファが側にいてくれたらと思う


先日 家で嫁とニヌファの話をしていた夜


今でもとても後悔している事があると嫁が言った


医者がニヌファに安楽死の為の注射をした時


僕達はニヌファの側にいたのだが


ニヌファを抱きしめたまま


注射をしてもらって


自分の腕の中で逝かせてやりたかった


あの子は どんなに心細かっただろうと


泣きながら 僕に話した



ニヌファがまだ元気だった頃に


「もしも お前が亡くなって生まれ変わったら


パパに会ってもお前に気づかないかもしれないから


パパにニヌファだって分かるように


合図を決めとこうな!」


僕はニヌファにそう言って


ある合図をニヌファと決めたことがある


その時 それは軽い冗談のような話だった


ニヌファが亡くなって9年がたつ


僕達は2度の引っ越し


そして職場も変わり


この海辺の静かな町で暮らしている


僕は 今も待っている


ニヌファと交わしたあの合図を


彼が送ってくれるのを











  


Posted by ★ニヌファ at 18:46Comments(0)★ニヌファ
 

2017年08月31日

★夏休み






「ホーム長、僕辞めます」


昼下がりのフロアーで


僕はホーム長にそう言った


「いやいや ちょっと待ってニヌファ君!」と


ホーム長があわてて僕を止めた


小学生の娘が夏休みに入るのだが


学童もいっぱいで入れない


僕達夫婦は共働きだ


夏休みの間 朝から晩まで小学生の娘を


家で一人で過ごさせるのは不安が多かった


8月だけ週3に出来ないかとお願いしたのだが


それは出来ないとホーム長から言われた


それなら仕事を辞めて8月は娘と過ごし


9月から新しく仕事を始めればいいと思った


仕事か家庭かといわれたら


僕は迷わず家庭だと答える


僕は子供の頃 あまり家庭的な家ではなかった


娘には そんな思いはして欲しくないと思っている


色々な考え方の人がいると思うが


僕と嫁は家族こそが一番大事だと思っている


休んでいる間は給料が減るが


それは娘の夏休みにはかえられない


結局、ホーム長が8月は休んで


9月から来て欲しいと言われた。


そして娘との夏休みが始まった


朝は1時間ほど夏休みの宿題を一緒にやって


その後は プールに行ったり


海に行ったり、娘の友人を家に招き


夜、一緒にベランダから花火を眺めた


水族館のバックヤードツアーにも参加し


熱海と伊豆高原に旅行にも行った


夏休みを娘にとっても そして


僕にとっても楽しいものにしたかった


娘も何度も楽しいと言ってくれた


特に予定もなかった午後


娘と二人 そうめんを作って食べた


台所から見える海に日の光が反射し


キラキラと輝いている


テーブルに吹き込んでくる風が


真夏の海の香りを運んできた


ベランダの外ではセミ達の声がしている


テーブルの上の麦茶のコップから


水滴がゆっくりと流れて落ちた


夏の穏やかな午後の時間だった


子供と過ごす このなんでもない一瞬一瞬が


とてもいとおしいと感じるようになった。


子供は 一日一日成長していく


嬉しさと寂しさが混ざったおかしな感情で


それを僕は眺めている


娘はきっと素晴らしい女性になるだろう


そして 僕達夫婦も子供の成長と共に歳をとっていく


歳をとらない人間など どこにもいない


老いていく事は 決して喜ばしい事ではないが


嫁と一緒に年をとっていけるなら


それもいいと思っている


きっとこの先 僕はこの夏休みを思い出すだろう


娘と二人でそうめんを食べながら眺めた


あのキラキラと輝く夏の一瞬を。










  


Posted by ★ニヌファ at 09:59Comments(0)★日々の雑談
 

2017年05月16日

★リサイクル ロク








「おとうさん なんか面白いもの入ってます?」


僕と嫁は昭和レトロな物にはまっていた


毎週末にこの店に顔を出すのを楽しみにしている


リサイクル ロク(仮名)は


70代のご夫婦が経営している


リサイクルショップと聞いて


みなさんが想像する店とは少し違う


80%は食器で


残りの20パーセントは


訳の分からない物が多く


洗濯機やらテレビやらの電気製品はない


食器は投げ捨ててあるのかと間違えるほど


無茶苦茶に積み重ねてあり


一個何かを手に取るときも


気をつけて取らないと


食器の山が崩れ落ちかねないのだ


古いノリタケやその他有名な食器などが


その山の中にねむっている


まるで宝探しのようなワクワク感もそうだが


とんでもなく安く売ってくれるのもまた魅力だ


そしてもう一つの魅力は


そのご夫婦の気持ちの良さだ


刈り込んだ白髪頭にメガネの


てきぱきとした旦那さんと


会計担当の優しい奥さん


偶然にこの店を見つけてからは


毎週末 ここに来るのが日課になった


店の前には椅子が3脚ほど置いてあり


ご近所の年寄りが 


お茶を飲み ロクのお父さんや


お母さんとおしゃべりをしている。


店はアパートの1階にあるのだが


元々は6店舗ほどの店があったそうだ


ブティックや飲み屋などがあったのだが


閉店するたびに店舗を広げ


今では6店舗全部がリサイクル ロクになった


看板もお弁当とかハンバーガーなどと


昔の店の看板がそのまま残っているのだが


そのまま残っているのは看板だけではない


各店舗ごとの仕切りやカウンターも残っていて


そこに食器やら何やらが山のようになっている


しかも2店舗分は詰め込みすぎて中にも入れない


その雑多さこそがロクの魅力でもあるのだが


ある日、ロクに顔を出すと


古い食器棚が置いてあった


ロクのお父さんに声をかけると


いつものように格安で譲ってくれた


「家まで車で届けてもいいんだけど


ガソリン代に500円だけもらっちゃうことになるんだけどさ


ついでに車に乗ってったら?


電車代もバカにならないからさ」と言ってくれた


食器棚を車で運ぶ途中


リサイクル ロクの事を


なんとなく聞いてみた


「昔は 八百屋だったんだよ 


リサイクルショップやってる友達がいてよ


そいつに勧められてさ


20年くらい前にさ 始めたんだよ」


何故 ロクという店名なのかと訪ねると


「昔 飼ってた犬の名前だよ


前は 違う名前だったんだけどさ


そいつを飼ってから そいつの名前にしたんだよ


雑種の犬でよ どっかに捨てられてたんだってさ


8月に俺んとこ来たとき二ヶ月位だったからよ


6月に生まれたんだなって分かったわけ


そんでロクって名前にしたんだよ


喧嘩っ早やくてよ でも利口だったんだよ


そいつが死ぬ時によ


お前以外の犬は飼わないからなって


約束しちゃったんだよな


だから 今も犬は大好きだけど飼わないんだよ


あいつが 亡くなった時


ずいぶん 辛い思いをしたんだよ。


福島の地震があったろ?


あん時よ 飼い主がいなくなっちまった


犬をテレビで見てよ


俺 そこに行って犬引き取ろうって思ったんだよ


けどよ ロクに約束しちまったからよ


お前以外の犬はもう飼わないってよ


だから 犬大好きだけど 飼えないんだよ」


ハンドルを握りながら


笑顔でお父さんが そう話してくれた


5月の少し暖かく強い風が


車の窓から吹き込んで


僕の髪を乱暴にかき上げていった


「俺 車を運転するとさ


少し荒っぽくなっちゃうけど勘弁してくれよ


チャッチャとしたくなっちゃうんだよ


元八百屋だからよ」


そう言って ロクのお父さんが


アクセルを踏み込んだ。











  


Posted by ★ニヌファ at 17:07Comments(0)★日々の雑談
 

2016年11月15日

★スーパーマーケット







家から海岸に行く途中に

Sというスーパーマーケットがある

どこの町にもあるスーパーで

誰でも知っているスーパーだ

24時間開いて便利な

いたって普通のスーパーだ

今の場所に引っ越す前

下調べにあたりを散策していて

海岸に行く途中、飲み物を購入するため

そのスーパーに寄った

明るい店内に 夏ということもあり

ビーチサンダルの人が多かった

サーフィンをする人も多いからか

サーフファッションの人が多く

おしゃれなのにゆるい格好の

日に焼けた人たちが多かった

横浜にいた頃に場所は違うが

同じスーパーに何度も行った事があるが

来ている人達によって

こんなにも店の印象が変わるとは不思議だった

飲み物をレジで購入した際も

「ビニール袋はいりますか?」と尋ねられた

この辺はエコバックの普及率が高く

ビニール袋も有料なのも驚いた

今の家に引っ越してからは

嫁とすぐにエコバッグを購入した

今ではエコバッグやトートバッグが

やたらと家にある(笑)

同じ距離で激安で有名なOというスーパーもあり

そこはほぼ毎日行くのだが

24時間オープンの例のスーパーに行くときは

なぜだか少し特別な感じがするのだ

ハワイの某スーパーに行ったときの様な

ちょっと特別な感じが。

ただのスーパーなのにバカバカしいと

思われるかもしれないのだが

やはり海の側という事 また来ている人達で

ちょっと違う雰囲気になっているのかもしれない

そのスーパーのブランドのアイスコーヒーが好きで

夏の間だけでも1000リットルは飲んだ(笑)

スーパーの前では

サーフボードを自転車に乗せた人たちと

何度もすれ違う

ウエットスーツを腰まで下げ

上半身裸で髪や背中を水が滴り落ちる

すれ違いざまに道の端によると

「すいません」と笑顔で頭を下げ

潮の香りと焼けたアスファルトに

水滴の跡を残し去って行く

僕は買ったばかりのサイダーを手に

その後姿をサングラス越しに見送った

不思議なもので海の側というだけで

なぜかリラックスした気分になる

海岸で海を眺めるとき

僕は海に何も求めない

ただ 眺めているだけだ

広く青い空と打ち寄せる波を見ていると

時間が止まった感じがする

その感じが僕は好きだ

永遠の景色の中に

自分がいるような気がするのだ

携帯電話のメールの着信音がなり

僕は現実に引き戻された

娘からの学校から帰るというメールだ

ズボンに付いた砂を払いのけながら

例のスーパーにサーターアンダギーを

売っていたことを思い出し

帰りに買っていこうと僕は思った。








  


Posted by ★ニヌファ at 16:45Comments(0)★日々の雑談
 

2016年10月18日

★運動会






「走るの遅いから嫌なんだ…」

夕食時に娘が今度の運動会での

徒競走が嫌だと話した

「いつもビリになるからやだよ 

こないだ運動会の練習のときもビリで

1位のゆみちゃんが走り終わってすぐに

りみを見てあっかんべーしたんだよ…」

「りみが走ってるのをパパも見たことあるけどさ

なんか嫌々走ってるよな

どうせ負けるから走りたくないみたいなさ

あのな 運動会でパパやママが見たいのは

りみが一生懸命頑張ってる姿なんだよ

順位は全然関係ないんだよ

パパ 高校生の頃に運動会で

100メートル走に出ることになってさ

パパ以外の選手が全員陸上部だったんだよ

そんでスタートラインに立った時

パパのクラスのみんなが

あーもうダメだ あいつビリになるよって

言ってる姿が見えたんだよ

なんだか パパ頭にきてさ

くそ!見てろよって思って

足が取れちゃうぐらい一生懸命走ったら

三位になったんだよ

パパのクラスはすげー盛り上がってさ

ざまー見ろってパパ思ったんだよな

だからりみも 走るときにさ

一生懸命走って勝つんだっていう気持ちで

パパ 頑張って欲しいんだよ

一生懸命走ってビリでもかまわないんだよ

りみが全力を出して走ってる姿が見えれば

パパとママはそれで幸せだからさ

まあ 頑張れよ!」

娘は運動会で頑張ると約束してくれた

運動会当日は晴れの予報だったが少し肌寒かった

色々な競技やダンスを見ていたが

娘の徒競走が気になってしょうがなかった

そして徒競走の時間が迫ってきた

握り締めたビデオカメラ越しに

緊張した顔の娘が

スタートラインに立つのが見えた

「りみー!!がんばれー!!」

嫁のひときわデカイ声がグランドに響いた

「りみー!!!」僕も大声で叫んだ

パーンというピストルの音と共にスタートした

僕はのぞいていたビデオカメラから目をはなし

走っている娘を大声で応援した

彼女は ただ前だけを見つめ

一生懸命に突っ走っていた

以前に見たあきらめの顔でなく

一心不乱に勝負に臨んでいた

「りみー 行け!行けー!!」

カーブを曲がりゴールへと走ってくる

娘の顔は真剣そのものだった

親たちの歓声の中、ゴールに娘が飛び込み 

その結果は なんと3位だった!

ゴールそばの順位別に座って待機する場所で

娘が嬉しそうに僕に手を振っていた

僕は握りこぶしの親指を突きたて

娘にやったぞ!の合図を送ると

娘も親指を立て僕に合図を送り返した

最高の瞬間だった

親バカで申し訳ないが

ずっと練習でもビリだった娘が

あきらめず一生懸命走りきった事を誇りに思う

その日の夕飯はひときわにぎやかだった

「パパ あのね ゆみちゃんビリだったんだ」

練習時に1位でビリの娘にあっかんべーをした

同じグループで走ったゆみちゃんという子が

ビリになったと教えてくれた

「きっとその子も ビリの子はこんな気持ちに

なるんだって分かったんじゃないかな」

僕はビールで娘と嫁が麦茶のグラスを持つと

「今日は りみが一生懸命頑張って走って

なんと3位になりました それを祝ってかんぱーい!」

そして娘の耳元で僕は小さな声で

「ゆみちゃんのビリにも乾杯」と言って

ビールの杯を持ち上げた上げた。








  


Posted by ★ニヌファ at 17:34Comments(0)★日々の雑談
 

2016年07月21日

★夏休み








「ただいまー!」


あと1日で夏休みになる為


娘が3時間だけで小学校から帰宅した


「お昼ごはん何?」


「そうめんにしようか?」


「うん いいね!」


僕がそうめんを作っている間


「暑いーっ!」といって扇風機の


スイッチを入れると


娘が床に寝転んだ


とても暑い日だった


子供の頃、夏休みは楽しみだった


夏休みの宿題もせずに


友達や近所のお兄ちゃんたちと


山や海をくそ暑い中走り回っていた


汗だくで家に帰ると


お袋がエメロンシャンプーで頭を洗ってくれた


汚れた服は、金銀パールプレゼントと書かれた


ブルーダイヤのでかい箱の奴で洗ってくれた


昔の洗剤の箱は何であんなにでかかったんだろう?


昼ごはんにインスタントラーメンが出ると


テンションが上がったものだ


夏の夜には蚊が多いためか


殺虫剤らしきものを噴射しながら


町中を走る軽トラックがあって


子供達がその後を追いかけて走っていた


今思えば誰かひっくり返ってもおかしくはない


余談だが沖縄では殺虫剤で


ピレトリンというアメリカ製の殺虫剤があって


これが抜群に効くのだ


見た目も使用してはいけないのではないかと


思わせるようなルックスだが


うちのお袋も「これが一番効くさー」と言って


いつも使っていたっけ


夏休みの朝にはラジオ体操で


眠い顔にスタンプカードをぶら下げて


参加するたびにハンコを押してもらった


駄菓子を買ったり友達と走り回って


大騒ぎした祭りの夜


公民館に来た移動の映画館に


手に汗にぎり興奮した


お袋に買い物を頼まれ店に行くと


今と違ってビニールでなく


茶色の丈夫な紙袋に入れてくれたのだが


その匂いが変に好きだった


その袋を両手で抱えて家にもどる途中


夕暮れに畑の雑草を焼く匂いがあたりに広がり


白い煙が空に上っていくの眺めていた


どこかの家から夕食を準備する香りと


ラジオから流れてくる沖縄民謡が聞こえていた


ケンカの後に泣いていた友達と


一緒に帰った畑のあぜ道


はなをが抜けてしまった島ぞうり


今でも子供の頃の夏休みを覚えている


バカバカしいかもしれないのだが


子供だった自分が今こうして


娘と迎える夏休みが不思議な気がするのだ


娘とそうめんを食べながら


「夏休み 楽しみだな」と僕は言った


娘が学校から持ち帰ったひまわりが


ベランダで風に揺れていた。









  


Posted by ★ニヌファ at 09:57Comments(0)★ 沖縄
 

2016年06月10日

★道しるべ






海の見える街に越してきてから半年以上が経つ

ベランダから見える海や灯台のある島

遠くに見える山の景色

そして海辺の街特有の

ゆったりとした流れ

ショートパンツにビーチサンダル姿の人達

ここに引越してきて良かったと

コーヒーを片手にベランダからの景色を

眺めながらそう思う

その日の天気や風、雲の形や時間によって

見える景色は毎日同じではない

それは心の状態によっても違うのかもしれない

以前、僕は犬を飼っていた

ニヌファという名前のバーニーズマウンテンドッグだ

病気で亡くなってしまったが

そのニヌファの名前は

故郷、沖縄の言葉で北極星を意味する

羅針盤もない時代に琉球の人々が

星空を眺め北極星を見て

自分たちの位置を知ることができたという

世界でも北極星にまつわる話は多いそうだ

共通しているのは「道しるべ」を

意味しているという事だ

僕と嫁が愛犬にニヌファという名前を付けたのは

僕達を照らし出してくれる

そんな存在になって欲しいと願い付けた

ニヌファが亡くなって何年も経つ

家から歩いてすぐの海岸に

夕日を見に出かけることがよくある

砂浜に腰かけ海を眺めていると

ニヌファがここに居てくれたらと思う

悲しく辛い気持で思うのではない

ただ ふと思うのだ

砂浜に寝転んでいる彼の姿を想像してしまう

彼が亡くなった後、僕達はその場所を引き払い

別の場所に移り住んだが

僕も嫁も環境的に良い状況でなく

耐えることが何年か続いた

そして今の場所を見つける事が出来た

偶然とは思えないことが色々あった

見つけたというより

導かれたと言ったほうがしっくりくる

僕も嫁もそう感じている

愛犬のニヌファは亡くなってしまったが

彼は名前のとおり僕達の道しるべとなり

この場所を照らし出してくれた

辛い時期があったがそれがなければ

この場所に僕達は来ることはできなかった

亡くなったニヌファは心の中に生きていますとか

そんな臭いセルフを言う気はない

ただニヌファが僕達の帰る家

帰る場所を照らし出してくれたから

今僕達はこの場所に居られる。

僕はそう思っている。

「あいつ 本当の北極星になりやがった」

僕は笑いながら嫁に言った。






  


Posted by ★ニヌファ at 13:52Comments(0)★ニヌファ
 

2016年05月14日

★うまいCoffee


































最近、うまいコーヒーを飲んだことがあるだろうか?

僕は先日、ここ何年かで一番うまいコーヒーを飲んだ

有野君(仮名)が僕の働く介護施設に

夜勤スタッフとして来たのは昨年の12月頃だ

小柄で顔も童顔だったので

僕に小学生みたいだとよくからかわれた

歳は29歳で9歳年上の嫁さんと結婚していて

奥さんは再婚で二人の子供がおり

有野君との間には2歳の子がいる

おとなしくてまじめな性格だ

僕は今の施設で働いて6年になるが

ホーム長が変わり主任が変わり

以前のアットホームな施設ではなくなった

仲間たちもほとんどが辞めてしまい

僕も5月10日で辞めることにした

今施設で働いているのは

ほとんどが新しいスタッフ達だ

僕が辞めることを聞きつけた

夜勤明けの有野君が挨拶に来てくれた

夜勤専任の有野君は他のスタッフとも

なかなか話す機会がなく

コミニケーションが取れないと言った

「ニヌファさんはよく声をかけてくれて

一緒のシフトの時は本当に安心できました」と言ってくれた

二人で互いの子供の事を話したりした

「僕の稼ぎなんかじゃいい学校行かせてやれないですよ

保険とか払うお金もないし 3人の子供育てるのは大変ですね…」

職員は300円で施設の食事を食べることができる

昼食時、有野君はタッパーにごはんを入れてきて

レトルトのカレーをかけて食べていた

僕と一緒に昼食をとる時 いつもそうだった

レトルトのカレーなら100円で済む

有野君の所は大変なんだなと

僕はそう思っていた。

「ニヌファさんだから言いますが

僕もこの施設 辞めようと思っているんです」と

有野君が言った。

会社側の経営難から職員に負担が大きく

それが辞めていく人たちの原因の一つにもなっていた

嫁さんとも話をして決めたのだと言った

「有野君の体が一番だからさ

そう決めたんならそれでいいんじゃないかな

きっといい所があるからさ」と僕は言った

「ニヌファさん いなくなると僕本当に辛いです

今までありがとうございました」と言って

ジョージアの缶コーヒーを僕に渡して去って行った

昼食のお金をうかせるために

いつも同じレトルトのカレーを食べている有野君が

僕に渡してくれた缶コーヒーを

もったいなくてしばらく眺めていた

そしてプルトップを開けコーヒーを飲んだ

とても温かくて心にしみわたった

それは今まで僕が飲んだ

どんなコーヒーよりも

美味しいコーヒーだった






  


Posted by ★ニヌファ at 08:55Comments(0)★日々の雑談
 

2016年01月16日

★AWESOME TRADING






手術をした親父を見舞いがてら


娘に故郷を見せてやろうと


沖縄に帰ったのは5年ぶりの事だった


那覇市内のホテルに荷物を預けると


親父が入院している病院に顔を出した


子供の頃お世話になったおばちゃんと


その娘さんが見舞いに来てくれていて


僕が子供の頃の話で盛り上がった


その後沖縄そばの大好きな娘のために


人気の沖縄そば店をめぐった


僕はグルメではない


また人気のそば屋に対して


天の邪鬼的にうまくないという気もないが


なんと言えばいいのか


いい材料とこだわりの麺かも知れないが


なにか味がしっくりこないのだ


今回 一番美味しかったそば屋は


人気店の上位に名を連ねている店でなく


何十年も前からやっている


地元の人が通う平凡な店だった


特に美味しかったのは


牧市の市場の中にある安いそば屋だった


以前は一杯350円だったが


僕達が行った時は390円になっていた


それでもかなり安いと思う


近くに立ち飲み屋が多くあり


見た目だけだとあまり入りたくはない


ボロい店だったのだが


そばの味やソーキの肉の味は


本当に美味しかった


本来、沖縄そばはこういう物ではないだろうか


人気の店達は色々なそばを求め過ぎて


本来のものとは違う遠い所に


行ってしまっている気がするのだ


色々な店に行くたびに


娘が持っていたキャンディーを


「どうぞ!」と言って店のおばちゃんたちに


一個あげていたのだが


そのリアクションがとても素敵だったのだ


おばちゃん達の顔がパッと明るくなり


「いいのーこれもらっちゃって?


おばちゃん 大事にたべるからねー」やら


「今 ここで食べようねー!


あー疲れも吹き飛ぶサー」と


満面の笑みで言ってくれた


元来、おばちゃん達は


子供が好きかも知れないのだが


食堂や物を売っている店で


逆に客から物をもらうことが


予想外で驚いてくれたようだ


「あー何かないかねー」と言って


わざわざポッキーを持ってきてくれた


洋服屋のおねーさんもいる


ファイヤーキングや雑貨好きの僕達は


ネットで調べた店に行こうと


場所を聞く為にその店に電話した


とても感じが良い男性が出たと嫁が言った


那覇市真嘉比にあるAWESOME TRADINGという店だ


程よい広さの店舗に雑貨が置いてあって


スターウォーズのパネルが飾ってあった


カウンターの裏に座っていた男性が


笑顔で迎えてくれた


ネックレスやTシャツ


娘のおもちゃなどを購入した


お礼を言って店を出た直後に娘が


「あっ そうだ!」と言って店に戻ると


リックからキャンディーを一個取り出して


「どうぞ」と言って男性に手渡した


男性は素敵な笑顔で「ありがとうねー


じゃこれとトレードしようねー」と言って


お店のコーヒーカップを娘に手渡した


「いいトレードができたサー」と言ってくれた


店名のAWESOME TRADINGは


僕の勝手な直訳だと「すげぇー取引」だろうか


彼からコップをもらった事が嬉しいのではない


娘が手渡した たかがキャンディー1個に


答えてくれて そして良いトレードだと


言ってくれた彼の気持ちがとても嬉しいのだ


僕は沖縄の出身だが


沖縄人がみな良い人ばかりではない事ぐらいは知っている


でも沖縄に帰るたびに


沖縄のおばーやおばちゃん、おねーさんや


この店の男性のような人達に


心が温まる思いになるのだ


都会にいると気が張り詰めてしまうものだ


支えの杖や助けが欲しい訳ではない


人間的な触れ合いだ


AWESOME TRADINGの店の男性が


キャンディーの代わりにトレードしてくれたのは


マグカップではない


彼の優しさをトレードしてくれたのだ。







  


Posted by ★ニヌファ at 10:48Comments(0)★ 沖縄
 

2015年10月03日

★帰りたい家







嫁の父親が仕事を無くし


生活のために同居してくれと


頼まれたのは5年前のことだ


嫁の両親は良い人たちだったが


同居には色々と問題があるものだ


お互いの考えや価値観の違いがある


ぼく自身も同居はストレスだったが


嫁のストレスは僕以上だった


実の両親とはいえ


すでにお互いの生活を築いていた者が


一緒に暮らすのは難しい


嫁の父親も仕事を始め


生活も安定してきたので


僕達は引っ越して


自分達だけで暮らすことにした


最近遊びに行った大きな公園のある


海沿いの街が気に入っていた


何度もその町に行き人々の暮らしぶりや


環境、小学校の雰囲気などを調べ


その街の夜の様子も見に行ったりした


行けば行くほどその街が気に入った


駅前に大きなモールが二ヶ所もあるのに


そのモールから少し歩くと


突然海沿いの田舎町になるのだ


ゆったりとして穏やかな人々が多く


サーフィンをする人も多い


嫁がすでに目をつけてある団地があった


40年ほど前の物件で


とある会社の社員寮だった


娘の部屋も考えていたので広さは必要だった


広さは70平米で5階建てで眺めもよく


リビング側から海と灯台のある島が見えた


寝室側からは山々が見え富士山も眺められる


リホームもされており清潔感があり


近所に24時間のスーパーもある


家賃は嫁の交渉で通常よりも


2万円以上も下がった


嫁の両親は孫と別れることが


寂しくてたまらなかったようだ


新しい場所での不安は娘の小学校だ


初登校の日に一緒に学校に行き


クラスの前で嫁が挨拶をした


海の側だからだろうか


のびのびとした子供らしい子供たちだった


30分ほどで娘もすっかり仲良くなり


翌日から一人で元気に行くようになった


引っ越してまだ二週間たらずだが


どんどんこの街が好きになっている


引っ越してから僕たちは


夜一度もテレビを見ていない


ベランダから夜の海や月を眺めながら


コーヒー片手に色々話しをして


ゆったりとした時間を過ごすのが好きだ


以前とは考えられない生活だ


引越は色々大変だった


色々な問題があり嫁とそれを


一つづつ解決していった


一個解決してはまた一個出てくる


そんな日々だった


娘の通う小学校は是非とも


行かせたい小学校だった


進学校とかそういう類の学校でなく


どこにでもある普通の小学校だが


学校を見学させて欲しいと頼んで


案内してもらった時の


先生と校長先生の人柄にひかれたからだ


本来は学区外なのだが


なんとか行かせることができた


そこがだめなら引越も考えたほどだった


なんにせよ今は落ち着き


この家での暮らしを楽しんでいる


家というのはただ暮らせば良いと


いう物ではないと僕は思う


そこに家族が集まり、生活をして


泣いたり笑ったりして そして


明日の自分へと立て直していく場所だ


なによりも そこに帰りたいと思う場所だ


家を探すときに僕達が大事にしたのが


駅からの利便性などではない


家の雰囲気や風の通り


窓から眺められる景色や


その家の持つ穏やかさや明るさ


そして家と同じくらい大事なのが周りの環境だ


騒々しくなく穏やかで


周りの景色や時間がゆっくりと流れる場所だ


たとえ通勤時間が30分延びたとしても


それがどうだと言うのだ


自分が落ち着ける場所に行けるのなら


自分が帰りたいと思う家に住めるなら


なんの問題があるだろうか


問題なのは駅に近いからという利便性のみを考え


騒々しくベランダから出ても


隣のビルを眺めるだけの家に


多くのお金を払って住む事ではないだろうか?


朝、コーヒーを片手にベランダを出ると


心地いい海からの風が吹き


灯台のある島や海が眺められる


日が昇って行く景色もまた素晴らしい


こんなにも空が広いのかと感じる


寝室側から眺められる山々も美しい


休みの日に家で過ごす時間が長くなった


先日、近所のスーパーに


娘と買い物に行った帰りに


近くの海岸に寄った


午後5時過ぎの海岸は人もまばらで


サーフィンをする人


砂浜で海を眺める人


僕達も砂浜に腰かけた


「パパ はだしで歩いていい?」


娘の声に僕は軽くうなずいた


娘は裸足で砂浜を走り回ると


今度の運動会で練習するという


踊りを踊り始めた


空はどこまでも高く


夕日が雲を染め美しかった


僕はさっき買った缶コーヒーを開けると


ゆっくりと飲んでフーッと息を吐いた


ぐるぐる巻きにきつく締め付けられた


心の糸がゆっくりとほどけていく


そんな感じだった。


こんな景色や時間は本当に大切だ


携帯で空の写真を撮っている人がいる


空の顔も少しずつ変化していき


またそれが美しい


海岸からの帰り道


「そういえば うまいラーメン屋を


家の近くに見つけたんだ」と言うと


「うわー行く行く!」と


娘が飛び上がって喜んだ。






  


Posted by ★ニヌファ at 10:43Comments(0)★日々の雑談
 

2015年04月05日

★学生時代





少し肌寒い教室には


カリカリと鉛筆を走らせる音が響いていた


僕は答案用紙を睨み付けながら


問題を解くことに集中していた


大学生の頃、1月頃だったと記憶している


後期のテストを教室で受けていた


昨夜はバイトの後に


友人たちと飲みに出かけた


まだ少し酒が残っている


近くにある高校の


吹奏楽部の演奏が聞こえていた


机と机の間を両手を後ろに組んだ


大学の先生がゆっくりと通っていった


時おり冬の風が窓を


カタカタと鳴らしていた


教室は三階にあったのだが


窓の外から何か声が聞こえてきた


誰か外で大声で叫んでいる


その声がどんどん大きくなった


「おーい ニヌファ!


どうせ分からないんだか早く出て来いよー!」


先にテストを終えた友人の声だった


腕を組んで歩いていた先生が教室の窓を開けると


「こらー!なにやってんだー


テスト中だぞ 静かにしろー!」と怒鳴った


外を睨み付けながらゆっくりと窓を閉めると


教室の中を見回し「ニヌファ君て誰だ?


友達が呼んでるぞ 本当に分からないのなら


早く出ていきなさい」と言った


教室中が爆笑した


テストを終えパーカーのジッパーを首元まで上げると


ライダースの皮ジャンを羽織り


僕は教室を後にした


階段を下りる頃には寒さが足元から


じんじんと染みわたってきた


建物を出ると正面にある芝生の植え込みで


二人の友人がニヤニヤしながら待っていた


「遅いぞニヌファ! 」という友人に


「バカヤロー」と笑いながら僕は言った


白い息が冬の空に溶けては消えた


「飲めよ!」と友人が


缶コーヒーを投げてよこした


「あったけーなー!」


缶コーヒーを両手で握ると僕は言った


「購買のとこの自販機、故障しててさ


続けて5本出てきたんだぜ」


原ちゃんがズボンの両ポケットに入れた


缶コーヒーを見せながらそう言った


「駅前の八百屋の向かいに


コピー屋があるの知ってるだろ?」と


もう一人の友人、小川が言った


「試験のノートをコピーしようと思ってさ


コピー屋に行ったら


向かいの八百屋の飼い猫が


コピー機の上に寝てんだよ


ほら コピー機って温かいじゃん?


俺、猫が乗ったままのコピー機のふた


そっと小さく開けてさ 


ノート入れてスイッチ押したんだ


そしたらその猫乗せたまま


コピー機の上のふたがウィーンっていって


右から左に動いてコピーしてやんの


笑っちゃうだろ?


猫 全然どこうとしないんだよ


したらさ 俺の次にいた奴も


やっぱり 猫に気を使って


ふた小さく開けてさノート入れづらそうにして


コピーしてやんの


コピー機、ウィーンっていって


右から左に繰り返し動いてんのにさ


ずーっと猫のっかってるんだよ


猫がコピー機動かしてるみたいだったぞ!」


「なんだよ それ!ほんとかよ」


僕たちはゲラゲラ笑った


「試験も終わったし飲みに行こうぜ?」


原ちゃんが言った


「おーいいな!行こうぜ」


「そういえば あの八百屋の猫


せんべい屋にもいたぞ


ケンタッキーの横の総菜屋でも見たことある


あの猫本当はどこの飼猫だろな?」


そんなくだらない話をしながら


襟を立て両手をポケットに入れ


寒さに震えながら駅へと向かって歩いた


「ニヌファ 今年は沖縄に帰るのか?


いいな 沖縄は暖かいんだろうな」


東京生まれの原ちゃんが言った


「原ちゃん 鼻水出てんじゃねーかよ!」僕が言うと


「しょうがないだろ 寒いんだからさ


誰かティッシュ持ってないか?」


「もってねーよ 手鼻かめよ原ちゃん」と


小川がニヤニヤしながら言った


「汚ねーなー お前ら」


僕は笑いながら言った


駅前の八百屋のみかんの箱が積まれた壁の


真ん中に貼られたカレンダーに


故郷、沖縄の暖かな海の写真と


水着姿の色っぽい女性が写っていた


「寒いのは やっぱり苦手だな」


カレンダーを見ながら僕はつぶやいた。







  


Posted by ★ニヌファ at 22:04Comments(0)★日々の雑談
 

2014年09月25日

★ジャミラの想い






「うわー並んでるなー」


店の前で並ぶ人たちを見て僕はそういった


川崎にある怪獣酒場は


ウルトラマンの円谷プロが


期間限定で一年間オープンさせた居酒屋だ


怪獣達が飲みに来る酒場という


コンセプトでオープンした店は


入口に地球防衛隊、ヒーロー


お断りの張り紙がはってあり


2メートルほどのゼットンや


ローマの真実の口を模して作った


ジャミラの顔があり、その口に手を入れ


地球防衛隊やヒーローではないと


証明しなければ店内に入れない


店内は色々なテーマに分かれており


怪獣モチーフのボックス席や


沢山の怪獣のフィギュアが並んだカウンター


怪獣無法地帯と呼ばれる座敷エリアなどがある


天井にはバルタン星人の円盤型の照明があったり


消火器が置いてある壁に火気厳禁と書いたシールが


ペスターという石油を食べる怪獣だったりと


細かい所まで凝っていた


誕生日の人だけ入れる部屋があり


ウルトラセブンの有名なシーンだが


ボロボロのアパートの一室で


メトロン星人とセブンがちゃぶ台を挟んで


対峙するというシーンを再現した部屋で


ちゃぶ台の前にメトロン星人があぐらをかいており


誕生日の人はその席に座れるのだ


僕達のテーブルに来た店長が


お盆に怪獣酒場でシーボーズの


供養をしたと話してくれた


僕たちは吹き出してしまった


シーボーズとは怪獣墓場から間違って


地球に来てしまった怪獣だ


ウルトラマンと闘う気もなく


結局ウルトラマンに誘導され


怪獣墓場に戻るというストーリーだ


メニューもすべて怪獣に由来するのだが


その中でも特に気に入ったのが


ジャミラの想いというスイーツだ


ジャミラを知らない人にはさっぱりだが


ジャミラは元々地球人だった


宇宙開発競争の中


某国が打ち上げた有人衛星が


事故により惑星に不時着し


救助を待っていたジャミラだが


母国が国際批判を恐れて事実を隠蔽し


救助をせず見捨てられてしまう


その惑星の環境で体に異変が起き


ジャミラは怪獣となってしまう


そして見捨てられた恨みから


復讐の為、地球に帰ってきた


国際平和会議が行われるビルを


壊そうとするジャミラは


平和会議ビルにあと一歩という所で


ウルトラマンに倒されてしまう


国際平和会議が行われるビルの


周りに立つ万国旗を


苦しみのたうち回りながら潰し


まるで赤ん坊の泣き声のような


断末魔の叫び声を上げ死んでしまう


子供ながらにジャミラにほんのちょっとでいいから


ビルを壊させてくれればいいのにと思ったものだ


ウルトラマンが憎くさえ思えた


それほどジャミラが可哀そうだったのだ


その後国際平和会議場の前に


「人類の夢と科学の発展のために


死んだ戦士の魂ここに眠る」と刻まれた墓が建てられた


科学特捜隊の隊員の一人が


「犠牲者はいつもこうだ 文句だけは美しいけれど」と


墓の前でつぶやくのが印象的だった 


ジャミラの想いというスイーツは


国際会議ビルに見立てた各国の国旗が立つティラミスを


ジャミラの形のスプーンで壊して食べるというものだ


その発想が憎いではないか


あの時そう思ったのは僕だけではなかったのだ


そして娘と一緒に国際会議ビル(ティラミス)を壊して食べる喜び


子供の頃のあの時の想いを


まさにジャミラの想いを


大人になった今はらせたような気分になった


僕が子供の頃に怪獣図鑑などで


覚えた沢山のウルトラマンの怪獣たちを


まさか娘が好きになり


共に楽しむことが出来るとは思わなかった


怪獣酒場に来ていた人たちは


ほとんどが大人だ(居酒屋だから当たり前だが)


子供たちも来てはいるのだが


大人の方が目を輝かせている


あの怪獣は強かったとか


あの怪獣のドラマのストーリーはとか


怪獣話をつまみに酒を飲む


僕たちはいつまでたっても子供だ(笑)


子供の頃に怪獣に抱いた夢と


その時代を思い出しノスタルジーに浸り


なんだか胸が熱くなってしまう


僕達大人は何でも知ってるような顔をしてるけど


大事なことを子供に気付かされる事もある


大事なことはとても単純でシンプルだ


大人になり世の中を生きる術を覚えたが


その代償に忘れてしまった大事な物


子供の頃を思い出すから


大事だと言っている訳ではない


いるはずもない怪獣に心をときめかせ


夢見たあの時の熱い想いの事だ


夢中になって怪獣酒場の怪獣達の名前を叫ぶ娘の姿に


子供の頃の自分の姿を重ね合わせてしまう


子供の頃、ずっと心に引っかかっていた


あの悲しい怪獣の想いを


何十年もたった今


娘と共に果たせたような喜び


そんな気持ちにさせてくれた


怪獣酒場 侮るなかれだ(笑)










  


Posted by ★ニヌファ at 22:26Comments(0)★日々の雑談
 

2014年08月20日

★真夜中の弁当




「あーっ また残してるじゃない」


娘の弁当を開けた嫁がそう怒鳴った


「野菜ばっかり残して!」


「だって お腹いっぱいだもん」と言う娘に


「嫌いな物だけ残してるくせに


何言ってるの!」と嫁が言った


娘は小学一年生になる


嫁も色々工夫しているのだが


たまに残してしまうのだ


嫌いな物でも我慢して食べるように


その度に僕に怒られるのだが(笑)


弁当と言えば、高校生の頃 


お昼休みに友人が


朝、母親とケンカしたと話しながら


弁当のふたを開けると


「何だよこれー!」と言った


見るとご飯の上にスライスした


キュウリが4枚のっかっているだけだった


「俺はバッタじゃねーぞ!」と友人が言って


みんなで爆笑したことがある


コンビニの弁当も美味しい物が多いが


僕は手作りの弁当が好きだ


特別養護老人ホームで働いていた頃


夜勤の仕事で23人を1人で見るのだが


夜になると混乱する入居者も少なくなく


徘徊や暴れたり便まみれになったり


具合が悪くなったりと


精神的にも肉体的にも辛いものだった


当時、娘が生まれたばかりで


また愛犬のニヌファも病気だった


嫁は育児の為に仕事を辞め家にいたが


娘やニヌファの看病で忙しかったが


毎回夜勤の時は弁当を作ってくれた


入居者が寝ているため


必要な明かり以外を消し


薄暗いフロアーで弁当を食べた


大げさに言わせていただくと


辛く忙しい仕事の中 弁当を食べている時が


家庭を感じさせてくれる時間だった


弁当を食べる前にいつも僕は


手を合わせ「いただきます」と言うのが癖だ


僕が中学生の頃だったと思う


おふくろが台所で料理をしていた


僕のおふくろはお世辞にも


料理が上手いほうではなかった


そのおふくろが料理を作りながら


「美味しくなりますように」と


料理をしている鍋に向かって手を合わせていた


その姿を今でも僕は覚えている


料理は自然にどこからか来るものではない


作る人間が相手の事を思いメニューを考え


食材を選び そして料理する


それらを経て食べる人間の口へと運ばれる


相手を思う気持ちと時間、愛情、労力


僕らはそれを食べているのだ


それが美味しくない訳はない


家では恥ずかしくて普通に


「いただきます」としか言わないのだが


弁当を食べる時は必ず手を合わせ


「いただきます」と言うようにしている


薄暗いフロアーで弁当を食べた後


よく携帯で嫁に電話した


娘の様子や病気の愛犬の状態を話した


今日は鼻血を出したとか


今日は具合が良さそうだとか


そんな話で一喜一憂した


電話を切り、食べ終わった弁当箱を洗っていると


コールが鳴り、僕は手を拭くと


すぐにその部屋に向かった


忙しくてめいっぱいな時は


一度動くのをやめて 窓を開け深呼吸をした


夜の空気は冷たくて気持ちが良かった


何軒か明かりがともっている家が見える


陽が昇るまでもう一頑張りだ


「よしっ!」誰もいない薄暗い廊下で


僕はそう言うとコールの鳴り響く


フロアーへと戻った。








  


Posted by ★ニヌファ at 09:22Comments(0)★日々の雑談
 

2014年07月07日

★防波堤の上





以前「別れ」という記事で


僕が妹のように思っている


大島(仮名)さんの事を書いたのだが


その大島さんがついに入籍したとの


嬉しいニュースが飛び込んできた


入籍したばかりだと言うのに


僕は彼女が赤ちゃんを抱いている姿を


早く見てみたいと思っている


まるで彼女のおじいちゃんの発想だが


彼女ならきっと素敵な母親に


なれると信じているし


なにより彼女にも家族を持つ喜びを


知ってもらいたいのだ


彼女の嬉しい報告からしばらくして


僕の会社の同僚の母親が


癌で入退院を繰り返していたのだが


先日家で倒れ、病院で検査した結果


余命1週間という結果が出たと


彼女がラインで知らせてきた


しばらく会社を休み母親に付き添いたいと


そんな内容のメールだった


なんと言葉をかけていいのか分からなかった


彼女が戻ってくるのをみんなで待っていると


その程度の言葉しか言えなかった


結婚と死という二つの出来事が


ほぼ同時に飛び込んできた


僕は何か達観した意見を持っている訳でもない


ただの平凡な男の一人だ


一日を悔いなく生きようとか


そういう意見を言う気もない


それはとても難しい事だからだ


ただ大切な人や家族と過ごす日々の


その瞬間瞬間があたりまえでなく


特別で素晴らしい時間だと思っている


何か特別な一日やドラマティックな日でなくとも


十分に素晴らしい一日だ


なぜなら自分の大切な人、大切な家族と


共にいられるという事は本当に幸せな事だからだ


子供の頃、オジーの畑に遊びに行った帰り道


オジーの馬車の荷台から見た


夕暮れの美しい畑道の光景


防波堤の上に腰かけ遠くの船を眺めながら


未来の自分に思いをはせた日


夕暮れの鐘が聞こえる帰り道


どこかの家から聞こえてきた


ラジオから流れる島唄の音色


親父に叱られた後に


姉とおつかいの帰り道


泣き出してしまった夜の公園


子供の頃の忘れられぬ記憶や景色


嫁と結婚し笑ったりケンカしたりしながらも


色々な出来事を共に乗り越えてきた


娘が誕生し家族が出来た日


闘病中の愛犬ニヌファの死で


悲しみに暮れた日々


嬉しい記憶も悲しい記憶も


全てが愛おしくて大切な記憶だ


無我夢中で過ごしていた時もあれば


ただ過ぎていった日々もある


家族が出来て感じるようになった


家族と過ごすあたり前の日々が


当たり前ではないという事を


共に喜び共に悲しんでくれる


そんな家族と過ごす日が


特別でない日などありはしない


子供の頃、防波堤から見ていた僕の未来は


家族の中にこそあるのだと


今ならハッキリと分かる









  


Posted by ★ニヌファ at 21:50Comments(0)★日々の雑談
 

2014年06月11日

★近くに泊まろうと脱線






ここ最近の我が家のマイブームは


近くに泊まろうがマイブームだ 


観光メインでなく街歩きがメインだ


電車で20分ほどの場所もあれば


1時間ほどの場所もある


観光で何か特別なものがあるわけでもない


何度か行ったこともある街だ


ぶらぶらその街を散歩していると


知っているつもりの町でも


実は知らないことが多かったりする


その街で泊まるホテルは


ビジネスホテルや格安のホテルにしている


その方が気軽に行けるからだ


荷物も少なく格好も普段と同じで身軽だ


暑い夏以外は僕はエンジニアブーツを


履いていることが多いが


夏はショートパンツにぞうりだ


ぞうりも何足かもっている


ハワイアナスが今のようにブームになる


15年ほど前だろうか


当時付き合っていた嫁がメキシコに


旅行に行った土産に買ってきてくれたのが


ハワイアナスだった


天然ゴムが足に心地よかった


ハワイアナスは少し細身な感じがする


僕は沖縄人なのでSKYWAYの島ぞうりを


気に入って履いている


子供の頃から履いていた事もあるし


気取りもなく気軽に履けて


生活の一部に溶け込んでいるのが好きだ


ビニール袋に入れられバナナみたいに


束になった色々な色の島ぞうりが


店先に吊るされていたのを思い出す


ビルケンのサンダルも昔は気に入って履いていた


ビルケンの履き心地に文句はないのだが


島ぞうりのロコ感というか地元な感じが


やっぱり好きで戻ってきてしまうのだ


ちなみに僕は新しいぞうりを買うと


必ずやるのが鼻緒の足の指の股に当たる部分の


製造過程で出来てしまう


ゴムの余りのような部分があるのだが


そのゴムの薄いピロピロの部分を


カッターでそっと削り取るのだ


無造作に履くぞうりなのだが


その部分が当たって皮がむける事もあるからだ


話が島ぞうりの話に脱線してしまった


大磯プリンスホテルは神奈川に住む僕らには


昔から大磯ロングビーチで知っている場所だ


知っていすぎて今さら行かないと


言った方がいいだろうか


昔は芸能人水泳大会なんてのもあったが


正直、ちょっと時代遅れな感じもする


僕も過去に一度しか行ったことがなく


混雑していて疲れた経験しかないのだが


それも相当昔の話だが…


嫁が大磯プリンスが時期外れだと


格安で泊まれるとネットで調べたので


今回の近くに泊まろう!は大磯に決定した


家族3人で一万円弱というリーズナブルさだった


大磯駅はなぜかハイキングに行く


中高年のグループに多く遭遇した


ハイキングで有名なのだろうか


街はやはり少しさびれた感があった


海に向かってブラブラ行く途中に


娘がお腹が減ったと言ったので


気になっていたハンバーガー屋か


もう一つ気になっていたうどん屋があったので


小学一年生の娘にどこに行きたいか尋ねると


即答でうどん屋と答えた


お前はジジイか!と娘に突っ込みながらも


僕たちはうどん屋に向かう事にした


また話は脱線するのだが 


仕事から帰ってくると娘が


リビングのテーブルで宿題をしていた


ノートの右端に大きく書いてある言葉で始まる


言葉を何個か書かなければいけないらしいのだが


大きく書いてある言葉は「ま」だった


書いているノートを覗き込むと


「ふんふん まくら あっ枕ね あるある


それから…まつたかこ? 松たか子?


松たか子って言葉か!名前だろ…


後は?…まらすか?…まらすか?


あっ マラカスね! おしい!意味わかんなくなってる」


どうせ話が脱線したついでだが


僕の働く介護施設の入居者の中田さん(仮名)が


以前テレビで見たドラマ「とんび」が泣けたと


僕と話をしているとき


そのドラマ「とんび」の主人公の


役者さんの名前は何というのかと聞いてきた


僕も知らなくて答えられなかったのだが


先日「ニヌファさん、とんびの役者さんの


名前わかったよ 忘れないように


紙に書いといたから」と言って


差し出した紙には「長渕剛」と書いてあった


「中田さん、長渕剛は役者じゃなくて歌手だよ」


そう言って笑ったことがあった


それから2日ほどして僕は仕事中に


ふとその事を思いだした


なんで中田さん長渕剛なんて言ったんだろと


思いだし笑いをしていたが


突然、ひらめいたのだ


「まさか…とんびじゃなくて とんぼ?」


僕は仕事中にもかかかわらず爆笑してしまった


話が長くなってしまったが


大磯プリンスは、1964年開業らしい


併設している大磯ロングビーチと共に


当時はかなりの賑わいだったのだろう


部屋へと続く廊下の絨毯の模様が


レトロすぎて僕は喜んでしまった


部屋も広く、少し古いつくりだが


南国のホテルに来たような雰囲気と


窓から見える一面の海が素敵だった


窓の真下にロングビーチのプールが見える


5月だった為プールは水を張っておらず 


きたる夏に向けプールの補修を行っていた


またそのプールの作りが素敵だった


レトロな建物が好きな僕と嫁は


そのプールを眺めているだけで楽しかった


娘とそのプールを近くまで見に行った


プールのペンキを塗っているスタッフと


目が合ったので「こんにちは」というと


「こんにちは」と軽く会釈をしてくれた


インド人のファミリーもプールを覗き込んでいた


僕たちは笑顔で挨拶を交わした


振り向くと朝のバイキングをまだ食べている


嫁が遠くレストランのガラス越しに手を振っていた


娘が「ママー!」と叫んで手を振りかえした


このホテルが出来た1960年代にも


こんな風景があったのかもしれない


同じ神奈川なのにタイムスリップしたような


そんな感じに陥ってしまう


大磯町がのんびりしているので


なおさらそう感じるのかもしれない


ロングビーチの巨大なプールを眺めながら


僕はそんな事を考えていた


話が色々と脱線してしまったが


近くに泊まろうは本当にオススメだ
















  


Posted by ★ニヌファ at 22:19Comments(0)★日々の雑談
 

2014年05月13日

★人は見かけによらない



















見た目が怖かったり怪しかったりするのに


実はとても良い人だったり


逆にきっちりした人に見えたのに


印象と違い不快な思いをする事がある


自宅近くのバス停でバスを待っていた


停留所には80代と思われる男性と


金髪に染めた髪にショートパンツ姿で


クロックスを履いた30代と思える男性がいた


バスが到着し乗ろうとしたときだ


前に並んでいた金髪の男性が


後ろに並んでいた僕と娘に


「お先にどうぞ」と声をかけた


「お子さんが一緒なので」と


金髪の男性がそんな事を言ってくれるとは


想像もしていなかった


僕はとても嬉しくなった


先に乗せてもらったからではなく


見ず知らずの僕らに対する


その金髪の男性の心遣いがだ


僕はその男性に丁重にお礼を言うと


その言葉に甘えさせてもらった


印象がいい意味で裏切られると


喜びもまたいっそう大きく感じられるものだ


ハワイのアラモアナショッピングセンター近くの


バス停でノースショア行のバスを探していた時だ


バス停のベンチに腰かけた


Tシャツにショートパンツ姿の


60代くらいの日焼けした白人男性が


ノースショア行きのバスを


僕が探しているのを知ると


自分もノースに行くので


一緒に行こうと声をかけてきた


僕は英語が喋れないが


そのくらいは理解できた


こう言ってはなんだが


ちょっとうさん臭い感じがした


何かあればさっさとバスを降りればいい


そう思い一緒にバスに乗った


バスの中でその男性は


チョコレートが何個も入った


ビニール袋を取り出すと


チョコをパクパクと食べ始めた


僕にもチョコを2~3個くれると


途中、途中でぼそっと


「ドールプランテーション」とか


通過した場所の名前を教えてくれた


ノースに到着しマーケットプレイスに


行こうとする僕にその男性が


こっちこっちと手招きをした


一緒にノースの砂利道を歩いていると


タンクトップとサーフトランクス姿で


砂利道を裸足で歩いてくる


10代と思しき少女と笑顔ですれ違った


庭先の色とりどりの花が美しい家の


玄関に続く5~6段ほどの木の階段に


腰掛け本を読んでいる


初老の女性の姿を見かけた


窓のレースのカーテンが風にそよいで


まるで映画のワンシーンのような


ノースの穏やかな風景だった


男性は海岸へ僕を案内した


海岸にはたくさんの人達が集まっていた


トリプルクラウンという世界的に有名な


サーフィンの大会が行われていたのだ


どうやら彼は僕がその大会を


見に来たのだと勘違いしていたようだ


彼は大会のブースに行くと


何人かの知り合いがいるらしく


手を上げて挨拶すると


僕の事を日本から来た友達と紹介し


大会のステッカーやら何やらをもらい


僕に手渡すと「hava a nice day」と言って


手をふってさっさと行ってしまった


僕はステッカーやら何やらを手に


大会のDJの声が聞こえる


ノースショアーの強い風が吹く海岸で


ポカーンと突っ立ったまま


「thank you…」とつぶやいた


僕は彼の名前すら聞いていなかった


人は見かけによらないものだ












  


Posted by ★ニヌファ at 22:29Comments(0)★日々の雑談
 

2014年04月29日

★ハワイでの朝食


























早朝7時にハワイホノルル空港に到着した


何時間も縛り付けられていた


飛行機の狭い座席から解放され


僕は大きく背伸びをした


いつも来ると思うのだが


ホノルル空港に着いた時の匂いが好きだ


あの匂いはカーペットクリーナーの香りで


ココナッツオイル系だと聞いたことがある


そういえば宿泊していたホテルの


カーペットも同じ香りがしていた


初めてホノルル空港に着いたとき


国際空港のはずなのに


なんだかしょぼいつくりだと感じたものだが


何度も行くようになると


ハワイらしいと思うようになった


ホノルルの街をバスの窓から眺めながら


これから始まるハワイでの休日に毎回胸が躍った


僕は飛行機でなかなか眠れないので


ハワイに着くとチェックインまで


ホテルに荷物を預け、サーフパンツ姿で


ABCストアーでゴザを購入し


ワイキキの海岸で2時間ほど寝るようにしている


目が覚めた頃には疲れが取れるからだ


ハワイで少し豪華な朝食をと思った時は


アウトリガーワイキキ内にある


ビュッフェスタイルのレストラン


正しくはバッフェらしいのだが


デュークスカヌークラブが好きだ


好きな具材を入れてくれる


オムレツコーナーやフレッシュジュース


パンケーキ、ワッフル、エッグベネディクトなど


僕はベーグルにスクランブルエッグと


カリカリのベーコンを挟んで食べるのが好きだ


ワイキキの海を眺めながら


のんびりと食べる朝食は最高だ


日本でこれほどのんびりと時間をかけて


朝食を食べることはまずない


砂浜を散歩する初老のカップル


ボード片手に横切っていく若者


海から心地よい風が吹き抜けている


オレンジジュースを持ってきた店員が


お礼を言うと笑顔で去って行った


南の島の穏やかな時間が流れていた


僕はコナコーヒーを片手に


今日はどこへ行こうかと


ガイドブックをめくった


旅は始まったばかりだ


リーズナブルな朝食を利用したいときは


クヒオ通りのフードパントリー近くにある  


同じくビュッフェスタイルのレストラン


ペリーズスモーギーに行った


広いオープンスペースと屋内に分かれている


緑に囲まれたレストランだ


僕が行き始めた頃は朝食は5ドルだった


味は…特別にコメントはないが(笑)


5ドルで腹いっぱい食べれるという


リーズナブルさでよく通った


ポーチュガルソーセージや


ベーコンなどを食べた


地元ならでのコナコーヒーも何種類かあり


ピュアコナというコーヒーがお気に入りだ


以前はブラックで飲んでいたが


ハワイに来て甘いコーヒーが好きになった


お腹もいっぱいになり


のんびりと周りを眺めていると


食べ物を取って戻ってきた白人女性が


自分のテーブルに置いてあった食べ物に


小鳥たちが群がっているのを見て


女性は両手を軽く上に向けると


なんてことなのというポーズをとった


周りのテーブルから笑いがおこった


オープンスペースな為小鳥も来てしまうのだ


ペリーズスモーギーは朝、昼


そしてディナーとビュッフェスタイルだったが


昼とディナーは行ったことがないし


また行く気もなかった


ディナーは違う場所で、そして


なによりおいしい店に行きたかったからだ(笑)


紹介しておいてなんだが


リーズナブルな朝食であまりうまくないが


ハワイに来たらなぜか一度は


朝食に行きたい場所なのだ


ワイキキの浜辺では夕方になると


サンセットを見る人が多い


他の場所で良い所はあるのだろうが


ベタにワイキキの浜に腰かけ


眺めるサンセットはいいものだ


浜辺ではキスをするカップルや


ギターやウクレレを弾く人と


色々な人種の人達が眺めている


僕が来る前もそして帰った後も


ここでサンセットを見ている人たちが


毎日いるのだと思うと


何とも言えない気持ちになる


太陽は同じはずなのに


どうして見る場所が違うと


美しいと感じるのだろうか


ペリーズスムーギーはその後つぶれてしまい


その場所にマキティハワイという


評判の悪いレストランが出来たらしい


残念ながらもう行くことはできないが


デュークスカヌークラブは今もやっている


またハワイに行ったら行きたいと思っている


もしデュークスに行くことがあれば


ひょっとして隣で食事をしているのは


案外 僕かもしれない。







  


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2014年03月23日

★卒園式






先日、娘の卒園式があった


時が過ぎるのは早いものだ


嫁と娘と三人で手をつなぎ


歩きなれた保育園への坂道を歩いた


正直 卒園出来て嬉しいという気持ちより


寂しい気持ちの方が大きかった


今の保育園も同じクラスの園児達も


そしてその親たちも好きだったからだ


卒園すればみんなバラバラの


小学校に入学することになる


娘と同じ小学校に入学するのは


今の保育園からは娘を入れて三人だけだ


それがなんだか寂しくてしょうがないのだ


卒園式の紺のジャケットと


チェックのスカートを着て


娘ははしゃいでいた


保育園に到着すると


娘は式の準備の為に教室に入り


親はフロアーに集まり


担任の先生と保育園での


今までの思い出や成長を語っていた


目に涙を浮かべて語る親も少なくなかった


子供を持つようになると


以前は当たり前に思えていた事が


特別で大切な事に感じられる


何かの区切りや旅行や誕生日や発表会


卒園式や入学式などはなおさら特別だ


娘のこれまでの努力や成長


親の葛藤や迷い


娘と過ごしてきたこれまでの日々


それだけで熱くなってしまうものだ


式が始まり子供たちの歌や


来賓の挨拶などがあった


そして子供たち一人一人が


両親に宛てた手紙を読んだ


自分の子供の番になると


その両親が席から立ち上がり


子供の読む手紙を聞いた


娘の番になり僕たちは立ち上がった


「パパ いつも絵本読んでくれてありがとう


ママ いつもごはん作ってくれてありがとう」と


手紙を読むと娘がぺこりとお辞儀をした


そして将来の夢を子供たちが発表した


「僕は 野球の選手になりたいです」


「私はアイドルになりたいです」


「私はせんべい屋さんになりたいです


なぜならお煎餅がすきだからです」という


微笑んでしまう夢を語る女の子もいた


娘は一番最後だった


「私の夢は 宇宙警備隊に入って


ウルトラマンになってみんなを守りたいです」と


娘が言うと会場がどっと湧いた


僕は壇上の娘にこぶしを上げ


やったぞ!との合図を送った


突拍子もない夢だが 


子供らしいというよりもなによりも


夢という言葉にふさわしかった


僕はその夢を語る娘が誇らしかった


壇上の娘が笑顔で僕に手をふった


式の後の懇談会で


これまでの園での生活を撮ったビデオが流された


誰かが映るたびに子供たちが


映った者の名前を叫び大声で笑った


親の知らなかった 


園での日々がそこに映っていた


顔見知りの子達がよちよち歩きだったのが


かけっこやプールではしゃぐようになり


みんなで料理をしたり


跳び箱が飛べるようになったりと


子供たちが成長していく日々の姿が


映画の早回しのように映し出されていた


その映像をみていると


何とも言えない気持ちになり


僕は泣きそうになった


まわりで何人もの親たちが泣いていた


自分の子供の事だけでなく


このクラスの子達の成長が


映し出されたその映像は


とても感慨深いものだ


その晩は、親と子供たちの食事会だった


子供も親もとても楽しい食事会だった


夕方5時から飲み始め


帰宅したのは夜の10時を過ぎていた


娘が楽しかったと帰りのバスで


何度も何度も僕に言った


保育園での子供の成長を


他の親達と話をしたが


保育園では子供だけでなく


悩み 迷いながら親も成長するものだ


バスの窓に写った娘の顔を見ながら


僕はそう感じていた。











  


Posted by ★ニヌファ at 21:55Comments(0)★日々の雑談
 

2014年02月09日

★1人ぼっちの昼食






会社で昼食をとる時


あまり使われていない小さな部屋があり


そこで僕は1人で取るようになった


元々はお昼休みに昼寝をしたいと思い


その部屋を使うようになったのだが


お昼に1人でその部屋で過ごす時間が


僕には大切になってきた


自分で言うのもなにか変だが


僕は会社では冗談ばかり言う


明るいキャラクターだ


職場の仲間にも「ニヌファさんはどこに行っても


誰とでも友達になれますね」と言われる


会社の仲間達はいい奴ばかりだし


みんなでワイワイ食事するのは好きだが


ただお昼のその時間は誰とも喋らず


1人で食事をしボーッとしたり


20分ほど昼寝をしたりして


少しリセットしたくなるのだ


以前 スポーツクラブで働いていた時


入社したての僕と入れ違いに


辞めた社員の人がいて


その人は上の人間と仲が悪かったが


スタッフから信頼されていた人だった


入社したての僕はスタッフから見ると


会社側の人間と取られたのかもしれない


朝「おはようございます」と


声をかけても返事もされない


昼食時に休憩室に行くと


ドアを開けるまではみんなが


ワイワイ話しているのが聞こえていたのに


僕がドアを開けるとシーンとしてしまう


そんな事がしょっちゅうだった


せめて食事の時だけは


誰にも気を使いたくないと


普段は誰も来ない屋上で


1人で食事をとるようになった


近くを走る列車や商業ビルが屋上から見えた


心地いい午後の風に吹かれながら


1人で弁当を食べ終えると


寝転がって空を見上げて過ごした


この嫌な状況もめんどくさい人間関係も


青い空は何も気にしない


ただどこまでも高く青く広がっているだけだ


空から見れば僕の悩みなど取るに足らない


小さなつまらない事かもしれない


その小さなつまらない事で


振り回され悩みあがいているのが僕達だ


その小さなつまらない事で


ふさぎ込んだり体調を悪くしたり


おかしくもなってしまう


「くそくらえだ」僕は寝ころんだまま


空を見上げてつぶやいた


僕の言葉が青い空にとけては


吸い込まれていった


電車がガタンガタンと音をたてて


走り抜けていく音が聞こえた


僕がスタッフの信頼を得ることが出来たのは


それから二年が経ってからの事だ


以前がまるで嘘のように仲良くなり


飲み会にはスタッフ全員が参加するようになり


仕事の悩みやほかの事でも


僕に相談してくれるようになった


その3~4年後にスポーツクラブは


オーナーの多角経営の失敗で倒産した


僕が1人で空を見上げていた建物も


今ではマンションになってしまった


いい仲間に恵まれた今の会社で


1人で過ごす昼休みの時間と


以前の屋上で過ごしていた昼休みでは


同じ1人でもまったく違うものだが


あの屋上で1人で過ごした時間は


僕には大切な時間だった


あの時間が無ければ僕は


乗り越えられなかったかもしれないからだ


あの時の午後のおだやかな風と


一人ぼっちで食べた弁当と


青い空につぶやいた言葉が


今ではとても良い思い出だ











  


Posted by ★ニヌファ at 19:44Comments(0)★日々の雑談