2015年10月03日
★帰りたい家

嫁の父親が仕事を無くし
生活のために同居してくれと
頼まれたのは5年前のことだ
嫁の両親は良い人たちだったが
同居には色々と問題があるものだ
お互いの考えや価値観の違いがある
ぼく自身も同居はストレスだったが
嫁のストレスは僕以上だった
実の両親とはいえ
すでにお互いの生活を築いていた者が
一緒に暮らすのは難しい
嫁の父親も仕事を始め
生活も安定してきたので
僕達は引っ越して
自分達だけで暮らすことにした
最近遊びに行った大きな公園のある
海沿いの街が気に入っていた
何度もその町に行き人々の暮らしぶりや
環境、小学校の雰囲気などを調べ
その街の夜の様子も見に行ったりした
行けば行くほどその街が気に入った
駅前に大きなモールが二ヶ所もあるのに
そのモールから少し歩くと
突然海沿いの田舎町になるのだ
ゆったりとして穏やかな人々が多く
サーフィンをする人も多い
嫁がすでに目をつけてある団地があった
40年ほど前の物件で
とある会社の社員寮だった
娘の部屋も考えていたので広さは必要だった
広さは70平米で5階建てで眺めもよく
リビング側から海と灯台のある島が見えた
寝室側からは山々が見え富士山も眺められる
リホームもされており清潔感があり
近所に24時間のスーパーもある
家賃は嫁の交渉で通常よりも
2万円以上も下がった
嫁の両親は孫と別れることが
寂しくてたまらなかったようだ
新しい場所での不安は娘の小学校だ
初登校の日に一緒に学校に行き
クラスの前で嫁が挨拶をした
海の側だからだろうか
のびのびとした子供らしい子供たちだった
30分ほどで娘もすっかり仲良くなり
翌日から一人で元気に行くようになった
引っ越してまだ二週間たらずだが
どんどんこの街が好きになっている
引っ越してから僕たちは
夜一度もテレビを見ていない
ベランダから夜の海や月を眺めながら
コーヒー片手に色々話しをして
ゆったりとした時間を過ごすのが好きだ
以前とは考えられない生活だ
引越は色々大変だった
色々な問題があり嫁とそれを
一つづつ解決していった
一個解決してはまた一個出てくる
そんな日々だった
娘の通う小学校は是非とも
行かせたい小学校だった
進学校とかそういう類の学校でなく
どこにでもある普通の小学校だが
学校を見学させて欲しいと頼んで
案内してもらった時の
先生と校長先生の人柄にひかれたからだ
本来は学区外なのだが
なんとか行かせることができた
そこがだめなら引越も考えたほどだった
なんにせよ今は落ち着き
この家での暮らしを楽しんでいる
家というのはただ暮らせば良いと
いう物ではないと僕は思う
そこに家族が集まり、生活をして
泣いたり笑ったりして そして
明日の自分へと立て直していく場所だ
なによりも そこに帰りたいと思う場所だ
家を探すときに僕達が大事にしたのが
駅からの利便性などではない
家の雰囲気や風の通り
窓から眺められる景色や
その家の持つ穏やかさや明るさ
そして家と同じくらい大事なのが周りの環境だ
騒々しくなく穏やかで
周りの景色や時間がゆっくりと流れる場所だ
たとえ通勤時間が30分延びたとしても
それがどうだと言うのだ
自分が落ち着ける場所に行けるのなら
自分が帰りたいと思う家に住めるなら
なんの問題があるだろうか
問題なのは駅に近いからという利便性のみを考え
騒々しくベランダから出ても
隣のビルを眺めるだけの家に
多くのお金を払って住む事ではないだろうか?
朝、コーヒーを片手にベランダを出ると
心地いい海からの風が吹き
灯台のある島や海が眺められる
日が昇って行く景色もまた素晴らしい
こんなにも空が広いのかと感じる
寝室側から眺められる山々も美しい
休みの日に家で過ごす時間が長くなった
先日、近所のスーパーに
娘と買い物に行った帰りに
近くの海岸に寄った
午後5時過ぎの海岸は人もまばらで
サーフィンをする人
砂浜で海を眺める人
僕達も砂浜に腰かけた
「パパ はだしで歩いていい?」
娘の声に僕は軽くうなずいた
娘は裸足で砂浜を走り回ると
今度の運動会で練習するという
踊りを踊り始めた
空はどこまでも高く
夕日が雲を染め美しかった
僕はさっき買った缶コーヒーを開けると
ゆっくりと飲んでフーッと息を吐いた
ぐるぐる巻きにきつく締め付けられた
心の糸がゆっくりとほどけていく
そんな感じだった。
こんな景色や時間は本当に大切だ
携帯で空の写真を撮っている人がいる
空の顔も少しずつ変化していき
またそれが美しい
海岸からの帰り道
「そういえば うまいラーメン屋を
家の近くに見つけたんだ」と言うと
「うわー行く行く!」と
娘が飛び上がって喜んだ。
Posted by ★ニヌファ at 10:43│Comments(0)
│★日々の雑談