2014年08月20日

★真夜中の弁当

★真夜中の弁当


「あーっ また残してるじゃない」


娘の弁当を開けた嫁がそう怒鳴った


「野菜ばっかり残して!」


「だって お腹いっぱいだもん」と言う娘に


「嫌いな物だけ残してるくせに


何言ってるの!」と嫁が言った


娘は小学一年生になる


嫁も色々工夫しているのだが


たまに残してしまうのだ


嫌いな物でも我慢して食べるように


その度に僕に怒られるのだが(笑)


弁当と言えば、高校生の頃 


お昼休みに友人が


朝、母親とケンカしたと話しながら


弁当のふたを開けると


「何だよこれー!」と言った


見るとご飯の上にスライスした


キュウリが4枚のっかっているだけだった


「俺はバッタじゃねーぞ!」と友人が言って


みんなで爆笑したことがある


コンビニの弁当も美味しい物が多いが


僕は手作りの弁当が好きだ


特別養護老人ホームで働いていた頃


夜勤の仕事で23人を1人で見るのだが


夜になると混乱する入居者も少なくなく


徘徊や暴れたり便まみれになったり


具合が悪くなったりと


精神的にも肉体的にも辛いものだった


当時、娘が生まれたばかりで


また愛犬のニヌファも病気だった


嫁は育児の為に仕事を辞め家にいたが


娘やニヌファの看病で忙しかったが


毎回夜勤の時は弁当を作ってくれた


入居者が寝ているため


必要な明かり以外を消し


薄暗いフロアーで弁当を食べた


大げさに言わせていただくと


辛く忙しい仕事の中 弁当を食べている時が


家庭を感じさせてくれる時間だった


弁当を食べる前にいつも僕は


手を合わせ「いただきます」と言うのが癖だ


僕が中学生の頃だったと思う


おふくろが台所で料理をしていた


僕のおふくろはお世辞にも


料理が上手いほうではなかった


そのおふくろが料理を作りながら


「美味しくなりますように」と


料理をしている鍋に向かって手を合わせていた


その姿を今でも僕は覚えている


料理は自然にどこからか来るものではない


作る人間が相手の事を思いメニューを考え


食材を選び そして料理する


それらを経て食べる人間の口へと運ばれる


相手を思う気持ちと時間、愛情、労力


僕らはそれを食べているのだ


それが美味しくない訳はない


家では恥ずかしくて普通に


「いただきます」としか言わないのだが


弁当を食べる時は必ず手を合わせ


「いただきます」と言うようにしている


薄暗いフロアーで弁当を食べた後


よく携帯で嫁に電話した


娘の様子や病気の愛犬の状態を話した


今日は鼻血を出したとか


今日は具合が良さそうだとか


そんな話で一喜一憂した


電話を切り、食べ終わった弁当箱を洗っていると


コールが鳴り、僕は手を拭くと


すぐにその部屋に向かった


忙しくてめいっぱいな時は


一度動くのをやめて 窓を開け深呼吸をした


夜の空気は冷たくて気持ちが良かった


何軒か明かりがともっている家が見える


陽が昇るまでもう一頑張りだ


「よしっ!」誰もいない薄暗い廊下で


僕はそう言うとコールの鳴り響く


フロアーへと戻った。











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Posted by ★ニヌファ at 09:22│Comments(0)★日々の雑談
 
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