2013年09月10日
★海に沈めたもの

ここの所 職場でのストレスが多く
精神的にあまりいい状態ではない
上の人間たちの思惑が絡まり
現場で働く者達は仕事に集中できない
彼らの権力争いに現場の人間を巻き込み
本当にバカバカしい状況だ
職場にいると息がつまりそうになる
僕が沖縄にいた頃は悩みがあると
よく海を見に行った
何かあれば海に行くなんて
さもカッコよく思えるだろうが
小さな島なので他に行く所もなかった
砂浜に腰かけ海をボーッと眺めた
そこで何かが解決する訳でもない
よせては返す波を眺めている間は
頭の中が空っぽになって
その事を考えずに済むからだ
その悩みを海に沈められたらどんなにいいかと思った
白い砂浜にビーチサンダルを脱ぎ捨て
裸足で砂浜に腰かけただ海を眺めていたり
ラジカセで好きな曲を聴いたりして過ごした
気が向けば海でひと泳ぎしたものだ
その日も僕は10代の若者が抱える
よくある悩みをかかえラジカセと
6パックになったペプシの缶を持って海に来た
僕はペプシの6パックの缶を一つむしり取ると
残りを水の中の砂に半分沈め
波に持っていかれないようにして冷やしておいた
ペプシのプルトップを開けると
泡が勢いよく飛び出してかなりの量がこぼれてしまった
来る途中に自転車でガタガタ道を通ってきたせいだ
僕は舌打ちをしながら海水で手を洗った
強い日差しを避け日陰に腰を下ろした
海からの風が気持ち良かった
海を眺めているとついウトウト寝てしまった
30分ほど寝ていただろうか
僕はさっき海に沈めておいたペプシを
もう一本取りに行った
海の水なのでキンキンに冷えてとはいかないが
普通に置いておくよりは冷えている
ラジカセのスイッチを入れ音楽をかけた
砂浜には誰一人いなかった
白い砂浜が日差しの照り返しでまぶしかった
ふと気ずくと砂浜を50代くらいだろうか
白人の男性が海に似つかわしくない
ワイシャツにズボンを膝まで折り曲げ
打ち寄せる波に素足を濡らしながら
砂浜をゆっくりと歩いてきた
僕の前で立ち止まると片手を上げ
「グッドミュージック!」と言って笑った
僕は海に沈めていたペプシを1つとると彼に渡した
「サンキュー」と言って笑顔でペプシを受け取ると
軽く手をふり砂浜を歩いて行った
何となくだがお互い話をする感じではなかった
この穏やかな時間をおしゃべりで
台無しにはしたくなかったし
彼もそう感じているように思えた
僕はまたぼんやりと海を眺めていると
スーツを着た日本人の30~40歳ほどの
男性が砂浜をかけて僕のそばに来た
「外人の偉そうな男の人見なかったかな?」と
汗だくの顔で僕に話しかけてきた
「あっちに歩いていきましたよ」と答えると
「まったく勝手に行っちゃって…ありがとう!」
そう言うと砂浜を走って行った
僕がいた砂浜の近くにはリゾートホテルがあった
多分その客かなんかだろうと思った
夕暮れも近づき帰ろうかと思った時だ
先ほど僕に声をかけてきた男性が
フルーツの盛り合わせを手にやってきた
「うちの社長が浜辺で一人で
音楽を聴いてる子がいるから
その子にこれを渡してくれって」
そう言ってフルーツの盛り合わせを
僕に渡すとそそくさと帰って行った
僕はフルーツの籠を手にポカーンとしていた
なんだかおかしくなってきた
悩みが解決した訳でも
誰かに聞いてもらった訳でもない
ただ海で外国人のおじさんに
ペプシを一本渡しただけなのに
どうしてこうなったんだろう
悩んで海に来たはずなのに
おかしな展開になってしまった
海が僕の悩みを沈めてくれたのだろうか
フルーツを食べてから帰ろうと
僕は浜辺で食べ始めたのだが
ふとあの社長に手渡したペプシが
プルトップを開けた瞬間に
泡がぶっ飛ばなかったか気になったが
その事を気にしている自分がおかしくて
フルーツ片手に笑い出してしまった
きっと彼もコーラまみれになって
浜辺で一人笑ったのかもしれない
夕暮れの太陽が誰もいない砂浜を
オレンジ色に染めはじめていた
Posted by ★ニヌファ at 08:35│Comments(0)
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