2010年04月16日

★心のかけら

★心のかけら




















1965年5月28日に僕は生まれた


沖縄の宮古島から少し離れた島だった


僕は小学生までそこで暮らし


中学校から宮古島に引っ越した


今の子供たちのように 物に溢れた暮らしではなかった


どちらかと言うと ない物のほうが多かった


コンビニも携帯電話もなく


便利という言葉とは程遠い時代だ


毎日 海や山で走り回り


遊びも自分達で工夫して遊んだ


信じられないだろうが 楽しい時代だった 


小学6年生の頃だ 友達5人と


テレビ塔かアンテナ塔なのかよく知らないが


サトウキビ畑の中に立つ塔まで遊びに行った


テレビ塔まで行ったからといって何が面白いのか


今ならありえない話だが 子供の好奇心のみで


みんなでワイワイいいながら向かった


喉が渇くと サトウキビ畑からサトウキビを


勝手に折って かじりながら歩いた


テレビ塔は 入口を鎖でふさがれただけで


入るのは容易かった


僕達は はしごのような急な階段を


頂上めざして登り始めた


テレビ塔の高さは よくは覚えていないのだが


15~20階くらいの高さだったろうか


とにかく子供の僕らの足がすくむほど高かった


みな怖かったと思うのだが


臆病者だと言われたくなくて


誰一人 やめようとは言いださなかった


頂上には円状の場所があり そこが唯一の


階段から降りられる場所だった


それなりに広かったのだが 


5センチほどの間隔で鉄板が張ってあって


その隙間から 下が見えるのだ


最初は怖かったのだが しばらくそこにいると


結構 慣れてしまった


その塔からの眺めは素晴らしかった


周りに広がるサトウキビ畑やその先の海や


周りの島までも見る事が出来た


5人で鉄柵の間から足をぶらぶらさせながら座り


風に吹かれ 遠くを眺めた


ちっぽけな島だったが 僕達の世界全てだった


小学校を卒業したら宮古島に引っ越す事を


僕は 友人達に告げた


みな驚き 残念がってくれた


話が途切れ しばらく黙っていたが


「お前の所に 必ず遊びに行くから」と


友人達が そう言って励ましてくれた


僕が 照れ笑いをしていると


強い風に 僕が履いていたゾーリの片方が


吹き飛ばされ サトウキビ畑の海の中に消えていった


降りたら すぐに探せるだろうと思っていたが


見つける事が出来ず 僕は片足はだしのまま


みんなと 歩いて帰った


それから 僕は宮古島に引っ越した


友人達も しばらくは遊びに来てくれたが


だんだん会わなくなってしまった


その友人達の一人と 同じ高校で再開するのだが(笑)


あの日の強い日差しと 風と テレビ塔と


サトウキビの青臭い甘さを 今でも覚えている


そして あの塔の上から飛ばされた僕のゾーリは 


どこに行ってしまったのかと思う事がある 


あれは今でもサトウキビ畑の中に


ポツンと落ちているのだろうか


それともあのゾーリは 


大人になっていく僕が 失くしてしまった 


少年の心の かけらなのだろうか



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Posted by ★ニヌファ at 13:25│Comments(0)★ 沖縄
 
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