2009年12月17日
★ 悪者同盟

小学校の頃 ラッキーという名の犬を飼っていた
一年生のとき 近所の診療所のおねーさんが
スピッツに子供が生まれたので
一匹あげてもいいと言ってくれた
オヤジもオフクロも犬は好きではなかったのだが
兄弟全員で必死に頼み込み
なんとか 飼える事になった
僕は三人兄弟で 姉が2人の末っ子長男だ
念願の弟ができて 嬉しくてたまらなかった
「かーちゃん 犬来た?」
学校から走って帰るとオフクロにたずねた
「応接間にいるよー」とオフクロに言われ
見ると ソファーの下に真っ白でフワフワの仔犬が寝ていた
そっと抱き上げると 僕の指をペロペロなめた
小学生の僕の片手に乗る大きさだった
姉たちと相談して 名前はラッキーに決まった
当時から かなりベタな名前だった
診療所のおねーさんに何を食べさせたらいいか尋ねたところ
「ミカンの絞り汁」と予想外の返事が返ってきた
「ミカンのしぼり汁って 昆虫じゃないんだから・・・」
今思い返しても 残念なおねーさんだった
その後ラッキーは すくすく育ち 悪がきの僕の立派な子分になった
よく家を脱走したりした
2日ほど帰ってこなかった日もある
帰ってきたと思ったら 血だらけで
他の犬と戦った傷が体のあちこちにあった
ある時 家の下の原っぱを通りかかると
ラッキーが 6匹ほどの犬と決闘している真っ最中だった
かなり怖かったが 弟分を見捨てる訳にいかない
棒を振り回し「ウワー!」と大声で怒鳴りながら
戦いの真っ只中に飛び込んでいった
運良く 犬たちは驚いて逃げ出してくれたのだが
とうのラッキーも一緒に逃げ出す始末だった
僕は チョッと漏らした
かつおぶし工場からラッキーが
かつおぶしをくわえて出てきたのに出くわした事がる
なぜか僕まで一緒になって逃げだした
いとこの子に あまり好きじゃない女の子がいた
いつもツンケンして 気に食わなかったのだ
その子が 用事で僕の家に荷物を持ってくると
オフクロから聞いた僕は
二階の窓からラッキーと一緒に覗いていた
すると遠くから その子がやってくるのが見えた
「ラッキー あいつ噛んじゃえ わかった?噛むんだぞ!」
その子を指差し僕はラッキーに言った
ほんの冗談のつもりだったのだが
あっという間に ラッキーは家を飛び出していくと
ワンワン吼えながら一直線にその子の元へ駆け出していき
スカートに噛み付いて 引っ張り回した
「キャー! 助けてー!」そう叫ぶと
荷物を放り出して 大声で泣き始めた
声を聞きつけて 姉たちが家から飛び出し
必死にラッキーを引き離した
僕はラッキーを引き離すと 密かにラッキーを褒めた
僕とラッキーの悪者同盟の絆は 強固なものだった
5年ほど前に沖縄に帰った時 ラッキーの話が出た
なぜ あの時ラッキーが襲ったのか謎だったらしく
真相を知った姉達は大爆笑になった
僕は知らなかったのだが あの後
その子をラッキーが2度ほど襲ったらしく
もちろん怪我はなかったのだが それ以来
大の犬嫌いになったらしい
不謹慎で申し訳ないが 僕の言った事を
ずーっと忘れなかったんだと思うと
なんだかニヤニヤしてしまった 悪者同盟健在だったのだ
小学校6年の頃だ ラッキーの具合が悪くなり
どんどん元気がなくなっていった
注射も打ったのだが 効き目はなく
寝てばかりいる日々が続いた
ある日 僕が学校から帰ってくると
ラッキーの姿が見えなかった
オフクロに尋ねると「神様のところにいったさー」と答えた
寝ていたラッキーが突然起き上がり
オフクロの手をぺロッとなめると
5~6歩よたよた歩き出して ばったり倒れて
それっきりだったそうだ
犬嫌いだったオフクロが泣きながら
「かーちゃん もう犬は飼わないからね!」と言った
僕は弟と子分の両方を失った
姉達と一緒にワンワン泣いた事を覚えている
今でも帰省すると 実家に錆びたラッキーのチェーンと
姉がセロテープに貼り付けた ラッキーの毛が残っている
僕とラッキーの悪者同盟は永遠だ
Posted by ★ニヌファ at 10:29│Comments(0)
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