2009年10月25日
★愛の洞窟

高校生の頃の話だ
ケンジ君という友人がいた
ケンジ君の家は商売をしていて
狭い島なので 商売の内容は言えないが
彼は家の商売をよく手伝っていた
ある日 ケンジ君が僕に相談があると言ってきた
「実は俺 Y子のこと好きなんだよ・・
ニヌファ Y子とは小学校の頃からの友達だろ?
なんとか 仲良くなれるチャンスはないか
力貸してくれないかな?・・・」
Y子とは小学校が一緒だった
背が小さく まじめで勉強がよくできる子だった
同じ高校になって 僕がよくY子と親しげに話しているのを
ケンジ君は よく見かけたらしいのだ
「別に かまわないよ」僕は即答した
ウインドサーフィンをやっている活動的なケンジ君が
学年一の真面目な子を好きになるなんて
僕は 意外な気がした
その後 みんなで海岸に遊びに行く計画があったので
ケンジ君の為にY子にも声を掛けた
その海岸には 洞窟があった
5分も歩けば すぐに出口に来てしまう短い洞窟だった
男女ペアでその洞窟に入ってみようと
高校生ならではの 浅はかな思い付きを実行した
枯れた木の枝にバイクのガソリンを染み込ませ
火をつけて それを明りにした
ひと組が終わると 次のペアが入るようにした
手を握って入る者もいれば 恥ずかしがるペアもいた
ケンジ君とY子を最後のペアにした
ケンジ君たちが 洞窟に入る時
たまたま懐中電灯が見つかったふりをして
それを 彼らにわたして洞窟に入ってもらう
そして洞窟の真ん中で電池が切れたふりをして
懐中電灯を消せば 真っ暗になり
Y子が怖がってケンジ君に抱きつくだろうとの
またまた高校生ならではの 子供じみた計画だった
ガソリンのせいなのか 燃えた木の枝のせいなのか
洞窟を出ると みんな鼻の穴が真っ黒だった
そしてケンジ君達に 計画どうり懐中電灯をわたした
洞窟の出口で 僕達は笑いながらしばらく待っていた
数分後 悲鳴が聞こえ 2人が洞窟から飛び出してきた
あちこち岩にぶつけ 傷だらけだった
ようやく落ちつたケンジ君に聞いたところ
しばらくはいい感じだったのだが
洞窟の真ん中あたりで明かりを消すと
Y子が悲鳴をあげて 飛びついてきたらしい
その拍子に懐中電灯を落としてしまい
真っ暗な中 Y子の悲鳴がこだまして
それを聞いているうちに だんだんと怖くなり
二人で真っ暗な中 岩にぶつかりながら
命からがら 出口へとたどり着いたらしいのだ
バカバカしい結果だった
その一件以来 ケンジ君とY子をくっつける作戦は
一時 休止状態になった
その後 Y子が入院したとのニュースを耳にした
Y子の友人に どこが悪いのか尋ねても
なんだか 全員フガフガして答えてくれない
頭にきて その友人の女の子をとっ捕まえて
強引に理由を聞いたところ
生理痛がひどいためとの事だった
そしてケンジ君も入院のニュースを聞いたらしく
病院に見舞いに行くと言い出した
僕は 一足先に病院に行くと
Y子に入院の理由を僕が知っていること
またケンジ君が これから見舞いに来る事を告げた
Y子は恥ずかしさに死にそうな顔だったので
「うちの ねーちゃんも生理でよく入院するんだよ」と
嘘を言って落ち着かせた
しばらくすると 花束とゴルゴ13の文庫本を5~6冊抱えた
ケンジ君が 神妙な顔で病室を訪ねてきた
入院してる しかも女の子になんでゴルゴ13なのか?
いかに暇つぶしに読む読み物とはいっても
入院患者に殺し屋のマンガは いかがなものか・・・
「大丈夫か? どこが悪いの?」とケンジ君が尋ねると
まるで 家族でテレビを見ていたら
ラブシーンがいきなり始まってしまい
理由もなく台所に行き 冷蔵庫の扉を開けたりするような
不自然な いたたまれなさな感じに
病室にいた女の子達がなったので
「勉強のやり過ぎで 過労なんだって」と
僕は 適当な事をケンジ君に行った
「Y子頭いいけど そんなに頑張ったら体に良くないよ」と
心配そうに ケンジ君がY子に言った
僕が 25~27歳ぐらいの時だったか 確かではないが
横浜にいる僕の所に 島にいる友人から連絡があった
ケンジ君とY子が結婚したとの話だった
そのとき 真っ先に高校時代の
あの洞窟での バカバカしい出来事を思い出した
僕は 思い出し笑いをしながら
「俺の計画も ずいぶん時間がたったけど
まんざらじゃなかったんだな」とつぶやいた。
Posted by ★ニヌファ at 10:13│Comments(0)
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