2009年09月28日
★ 旅立ち

高校を卒業した時の事を覚えているだろうか?
僕の高校の卒業式は 後輩の子達がメリケン粉や生卵を
祝いに卒業生にぶつける風習があった
いつでも立派な天ぷらになれそうだった
頭も学生服も真っ白になって
友人達と写真屋に直行して
みんなで 記念写真を撮った
僕の高校では卒業式のその夜に
「分散会」という名のパーティーを開く
その夜は スーツや着物などの正装をして飲み会に行く
朝まで続く卒業パーティーだ
ただ 高三の三学期の段階で
飲み会の回数は 以上に多くなっている
二日に一回ぐらいのペースで 何らかの飲み会がある
朝まで飲んで 学校に向かうのだが
学校の近くに泡盛工場があって その側を通ると
泡盛の匂いに 二日酔いの僕らは
軽い吐き気をもようした
実際 吐いてる友人もいた
女性だった為 妊娠疑惑が出たらしい
分散会の時は クラス50人分のお酒を飲んだ
その後も飲み会は続いたので
いったいどれ位飲んだのかよく覚えていない
2万ガロンくらい飲んだのかもしれない
2次会 3次会 4次会 もはや何次会なのかも分からない
分散会の後は 本土に行く者 沖縄本島に行く者
色々な 場所へと旅立っていくのだが
誰かが旅立つときは 空港までみんなで見送りに行った
何度 空港に行ったかわからない
自分が旅立つ時まで 空港に誰かの見送りに行った
飛行機に乗る前にガッツポーズをする者
泣きながら抱き合う者 色々だった
別れの日が近づいてきた ある日
友人達5人と夜の海岸に行き そこで飲み会をした
月明かりの中 砂浜に腰をおろし みんなで酒を飲んだ
くだらない笑い話 好きな女の子の事 この島を出て行くこと
そして この先待っている未来への期待と不安など色々話した
酔っ払って海岸で寝てしまい 朝日で目を覚ました
みんなで 黙って海から上がってくる朝日を眺めた
輝く波間の彼方から 朝の光が ゆっくりとこぼれ落ちてくる
この瞬間はもう二度と来ないとお互い知っていた
それは 旅立ちの前の静けさだ
呼吸をする事さえ 切なく そして苦しい
すべての音が無くなり 永遠とも思える静寂
島が僕達へ送ってくれた旅立ちへのエールかもしれない
その帰り道 だれも口をきかなかった
互いの家に向かう分かれ道で
僕達は 互いに握手をして「それじゃ」と言って分かれた
それが最後になった奴もいれば
その後 何度か会う奴もいた
あれから ずいぶん時が流れた
故郷を離れた者もいれば 戻った者もいる
今 僕は故郷とは遠く離れた土地で朝日を見ている
僕も色々あった 結婚して 子供もできた
あの時の友人達が 今どうしているのか
みんな どんな人生を送ったのだろうか
思い描いたようなベストな人生ではないけれど
それなりに 幸せを感じることもある
「おい 俺は頑張ってるぞ みんなも頑張れよ」と
ぼそっと つぶやいてみる
あの時 みんなで見たあの景色が
モノクロームの写真のように
今も心に焼きついている
Posted by ★ニヌファ at 11:39│Comments(0)
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