2009年09月13日

★オジー

★オジー




















うちのオジーは 畑を持っていた



けっこう広い サトウキビ畑だった



小学校の頃 オジーの馬車に乗って



一緒に 畑に行くのが 楽しみだった



ゆっくりと 馬に引っ張られ



のんびりと 進む 畑の道



オジーの畑には 大きなガジュマルの木があって



その下に 小さな小屋があった



小屋の中にはカマドもあって 



農具の他に 四畳半ほどの板間もある



子供の僕には 秘密基地のようだった



畑仕事は チョッと手伝うだけで



後は畑の回りを散策して 遊んでいた



お昼に オジーと一緒に食べるオニギリは



オバーが朝作ってくれた 大きな おにぎりだ



オジーはそんなに 喋るほうでは なかった



「うりっ!食べなさい。」と言って



おにぎりを 何個もわたしてくれたっけ



お茶は 大きなヤカンに入っていて



オジーはヤカンから直接 お茶を飲んでいた



その姿がやたら大人で かっこよく見えたものだった



畑の帰り 疲れたオジーと僕は



馬車の上で 寝てしまった



途中でハッと 目を覚ますと



馬はのんびりと 道路脇の草を食べながらも



ちゃんと家にむかって 歩いてくれた



子供ながらに 畑道の夕暮れが



美しいと思ったものだった



「映画に行きたい」と オフクロに泣き付いた時



共働きの両親は 時間がないので



オジーに連れていってもらいなさいと言われ



オジーと 行く事になった



なぜかオジーはスーツに パナマ帽姿だった



「映画行くだけなのに?」と思ったのだが(笑)



オジー 結構 かっこよかったなー



泳ぎを教えてもらったのも オジーだった



水泳を教えてくれと 頼んだら



サバニ(小船)に僕を乗せると



「この辺で 泳ぎなさい」そう言って



突然 海に投げ込まれた



おぼれない為に 必死でバタバタしてたら



知らないうちに 泳いでいた



オジーを ひどい事をするものだとも思わなかった



こうやって みんな水泳を



覚えるものだと 思っていたのだ(笑)



オジーはニコニコしながら サバニの上で



タバコをふかし 僕を見ていた



うちのオヤジは とても厳しかったのだが



オジーは  優しかった



ベタベタした 優しさでなく



不器用な やさしさだった



若い頃は 結構男前だったと



オバーが 言っていた



24歳のころだ 僕は横浜で一人暮らしをしていた



田舎から オジーの具合が悪くなったと電話があった



沖縄に戻ると オジーに会いに行った



久しぶりに 見たオジーは



僕が知っている オジーと違い



とても小さくなって 布団で寝ていた



僕の事も もう分からなくなっていた



みんなが オジーの事を気遣って



もう歳なんだから 楽してほしいと



畑仕事も やめてもらって 



それから少しして 具合が悪くなってきたらしい



それから 1年ほど経ってからだろうか



オジーが 亡くなったと電話があった



妙な話だが 理解できなかった



意味は分かるのだが どこか遠くの



実体の無い話のような気がしたのだ



その日の夜 バイトから疲れて帰ると



ひさしぶりに姉から 電話があった



子供の頃の思い出話をしている時だ



オジーが亡くなったという事の



実感が 突然胸に飛び込んできた



その時に 僕はオジーの死を認めた



受話器を 握り締めながら



ワーワー 大声で泣いた



一緒に帰った 夕暮れの畑道や



 おにぎりを一緒に食べた 畑の昼休み



サバニの上の タバコをふかすオジーの笑顔



懐かしい風景が どんどん どんどん膨らんで



胸が 張り裂けそうになった



あふれる涙を 止める事が出来ず



姉の心配する声も 耳に入らなかった



あれから ずいぶんたった



二番目の姉が オバーは 時々オジーと



話をしているとの 話をきいた



目を閉じて なにやらブツブツ話しているらしい



ユタのオバー ならではかもしれないが



そんな時は ちょっとオバーが羨ましくなる



この歳になって 僕も色々オジーと話したい事があるのだ



なにより オジーの声をまた聞きたいと思うのだ



「うりっ! 食べなさい。」なんて声を



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Posted by ★ニヌファ at 13:02│Comments(2)★ 沖縄
∴ この記事へのコメント
はじめまして マンボと申します このタイミングでコメントしていいのか、迷いましたが今、書くことを決めました オジーを思う気持ちすごく伝わりました 私は先ほど来月カジマヤーの日を迎えるおじいちゃんの話を書きました 自分にとって心の芯の部分をいまだ強くしてくれる、祖父母に感謝しない日はありません おばあちゃんどうか健康で長生きされますように きっとオジー様はいつも見守ってくれていると感じます 
Posted by かんじエーンドマンボかんじエーンドマンボ at 2009年09月13日 13:16
マンボさん はじめまして!
ニヌファです宜しくお願いします!
元々 違うブログで書いているんですが
てぃーだブログ今回初めてなので 過去に書いた記事を載せました オジーが亡くなったのはもう十何年も前の事です 残念ながらオバーも前の年に亡くなりました 
100歳でした
オジーやオバーが自分にはもういないんだと思うと 本当にさびしいものです 
マンボさんの祖父母に感謝しない日はないという言葉は本当に素敵ですね
カジマヤー盛大に祝ってください!
Posted by ニヌファニヌファ at 2009年09月13日 17:28
 
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