★道しるべ

★ニヌファ

2016年06月10日 13:52






海の見える街に越してきてから半年以上が経つ

ベランダから見える海や灯台のある島

遠くに見える山の景色

そして海辺の街特有の

ゆったりとした流れ

ショートパンツにビーチサンダル姿の人達

ここに引越してきて良かったと

コーヒーを片手にベランダからの景色を

眺めながらそう思う

その日の天気や風、雲の形や時間によって

見える景色は毎日同じではない

それは心の状態によっても違うのかもしれない

以前、僕は犬を飼っていた

ニヌファという名前のバーニーズマウンテンドッグだ

病気で亡くなってしまったが

そのニヌファの名前は

故郷、沖縄の言葉で北極星を意味する

羅針盤もない時代に琉球の人々が

星空を眺め北極星を見て

自分たちの位置を知ることができたという

世界でも北極星にまつわる話は多いそうだ

共通しているのは「道しるべ」を

意味しているという事だ

僕と嫁が愛犬にニヌファという名前を付けたのは

僕達を照らし出してくれる

そんな存在になって欲しいと願い付けた

ニヌファが亡くなって何年も経つ

家から歩いてすぐの海岸に

夕日を見に出かけることがよくある

砂浜に腰かけ海を眺めていると

ニヌファがここに居てくれたらと思う

悲しく辛い気持で思うのではない

ただ ふと思うのだ

砂浜に寝転んでいる彼の姿を想像してしまう

彼が亡くなった後、僕達はその場所を引き払い

別の場所に移り住んだが

僕も嫁も環境的に良い状況でなく

耐えることが何年か続いた

そして今の場所を見つける事が出来た

偶然とは思えないことが色々あった

見つけたというより

導かれたと言ったほうがしっくりくる

僕も嫁もそう感じている

愛犬のニヌファは亡くなってしまったが

彼は名前のとおり僕達の道しるべとなり

この場所を照らし出してくれた

辛い時期があったがそれがなければ

この場所に僕達は来ることはできなかった

亡くなったニヌファは心の中に生きていますとか

そんな臭いセルフを言う気はない

ただニヌファが僕達の帰る家

帰る場所を照らし出してくれたから

今僕達はこの場所に居られる。

僕はそう思っている。

「あいつ 本当の北極星になりやがった」

僕は笑いながら嫁に言った。







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