★ 永遠の星
7月18日はニヌファが生きていれば
4歳の誕生日だった
ニヌファが亡くなって1年10ヶ月がたつ
まだ 娘が生まれていない頃
仕事を終えて 家への帰り道
アパートの入口までのなだらかな坂道の
坂の上に 嫁とニヌファが
よく待っていてくれたものだ
自転車を押して帰って来た僕に
ニヌファが走って迎えに来てくれた
嬉しそうに 毛をなびかせながら
僕の所にかけてくる姿は今でも忘れられない
大はしゃぎで 僕に体を押しつけてきた
「パパ おかえりなさい あのね 僕ね 今日ね・・」
まるで そう話しかけているように見えた
仕事帰りの嫁をニヌファと迎えに行った事もある
嫁を迎えに行く事をニヌファは知っていて
歩くスピードがどんどん早くなっていくのだ
駅の出口の 英語のUを逆さにしたような
車止めに僕が腰かけ 僕の股の間にニヌファが座り
嫁の乗った電車が来るのを待っていた
その待っている姿が可愛いと
通る人に よく声を掛けられた
駅の出口から人が出てくるたびに
ニヌファがキョロキョロと嫁の姿を必死で探して
帰って来た嫁を見つけると 嬉しさではしゃぎまわり
リードを持つ僕の声も耳に入らず
僕をひきずりながら嫁の方へ走って行った
毎日の生活の中で 帰って来た時に
あれほど熱狂的に 迎えてくれるのは
犬以外に いないだろう
ニヌファが亡くなった直後は
ニヌファとの散歩道を通るのが辛くてたまらなかった
いつもの坂道が いつもの駐車場が
とても空虚な物に感じられた
まるで 見知らぬ町の見知らぬ家に
住んでいるような そんな気がした
ニヌファが亡くなってしばらくして
駅からバスに乗った帰り道
バスが ニヌファと歩いた散歩道を走った
窓から外をぼんやり眺めていた僕は
胸が張り裂けそうになってしまった
一つ前のバス停でバスを降りると
我慢出来ずに着ていたシャツで顔を隠し
大声で泣きだしてしまった
通る人の事など気にもしなかった
ニヌファが走り回った駐車場や道を
今 僕は娘と歩いている
その気持ちを どう言葉にしていいかわからない
今でも 駅に行くたびに
ニヌファと嫁の帰りを待っていた
車止めに目がいってしまう
ニヌファを亡くした後 思うのは
面倒を見てもらっていたのは
僕の方だったと言う事だ
仕事のストレスや 日々の悩み
誰にも言えない事もニヌファになら
なんでも隠すことなく話す事が出来た
ニヌファがいる事で 何度も救われた
彼は 僕の子供であり母親であり親友で
僕の心の奥底まで入ってこれる特別な存在だった
2年3ヶ月という短い時間しか共に過ごせなかったが
僕達には 忘れる事のできない時間だった
時が過ぎ 物事が変わっていこうと
ニヌファとの思い出が色あせる事はない
それは僕の心の夜空に輝き続ける
永遠のニヌファ星(北極星)なのだから
ニヌファ 4歳の誕生日おめでとう
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