★ 犬の心

★ニヌファ

2009年09月19日 10:39



















ニヌファが亡くなってから11ヵ月がたった



先日 ニヌファが使っていたケージを



錆びてきた事もあって 捨てることにした



大型犬が使っていたので結構な大きさのケージだ



粗大ゴミのシールを張り 指定された場所に置いた



「あいつ 怒るかな?」僕がそう言うと



嫁が ポロポロ泣きだした



僕達は ニヌファが亡くなってから



一日たりとも ニヌファの事を考えない日はなかった



昨年の暮 12月31日の事だ



その日は 嫁の親戚と大晦日を過ごすことになり



なんだかんだで 約束に間に合わなくなりそうで



自宅で急いで出かける準備をしている時だ



なんだか 焦げ臭い臭いがしたのだ



実は 何日かまえから 焦げ臭い臭いがしていたのだが



原因が さっぱり分からなかった



その日も なんだか気になって



家中を探し回ったが 原因が分からない



「テレビが ショートしてんのかな?」



テレビを動かして 裏を覗きこんだが何もなかった



ふと テレビの裏側の床を見ると



そこに ニヌファの毛玉が落ちていた



「ニーちゃんの毛だ!」嫁がそう叫んで 毛玉を拾いあげた



遅刻しそうな事も忘れ 2人で涙ぐんでいる時だ



かすかに バチバチ バチバチという音が聞こえた



音の方に 耳を澄ませながら近づくと



ウォーターサーバーのコンセントが 



バチバチと音をたてて半分溶け 火花をちらしていた



ニヌファの毛を見つけていなければ



そのまま出かけ 大晦日に家はまる焼けだったろう



「ニーちゃんが 教えてくれたんだよ」嫁が言った



「あいつ天国で オバー!火事になっちゃう どうしよう!



なんて言ってバタバタ走り回って 慌てたろうな」



そう言うと 僕達はその姿が目に浮かぶようで



2人で ふきだしてしまった



実際のところ ニヌファは亡くなってから



どんなに思っても夢にも 出てこなかった



ずいぶんたってから一度だけ 嫁の夢に出てきた



その日も 深夜ニヌファの事を思い



泣きながら嫁が寝たところ 夢に出てきたらしい



足もとに くっついている感覚が生々しく残っていたと



嫁が 嬉しそうに言っていた



ニヌファは やさしい子だったので



嫁を心配して 夢に出てきてくれたのだろう



娘の琉美は 初めて喋った言葉が「ワンワン」だった



まだ 喋れないのだが 単語をポツリと言う事がある



嫁が琉美を抱いている時の事だ



「琉美ちゃん ニーちゃんはどこ?」と嫁が冗談半分で聞くと



琉美が ニヌファの遺灰を指さした



二人して 絶句してしまった



その後 何度か聞いたのだが 結果は同じだった



僕が夜勤で 自宅にいないときの話だが 



朝方 嫁が目を覚ますと 寝ていたはずの琉美が



布団の上に ちょこんと座っていて



僕の布団の枕の横を指さし「ワンワン」と言ったらしいのだ



その場所は僕が寝た時 必ずニヌファ来る場所だった



またある時 僕が夜パソコンを見ていると 



琉美がやって来て「ワンワン」と言って ある場所を指さした



そこは ニヌファのお気に入りの場所だった



彼女はやみくもに どこかを指さしている訳ではない



それに 彼女はまだ一歳五か月だ



ニヌファを記憶しているかどうかも わからない



「お前には ニーちゃんが見えるんだな」



そう言って 僕は彼女を抱き上げた



何かの偶然なのか 違うものなのか



はっきりとした事は 僕には言えないが 



でもニヌファが 僕達に会いに来てくれていると信じたい



いや そうだと信じている



そして 娘にはその姿が見えるのだと



「オバーの血を ひいてるからね



琉美も 特別な力があるのかもよ」そう言って 嫁が笑った



これは 僕の経験から言うのだが 犬にも心がある



優しくて ひたむきで 迷いのない愛情に溢れた心が



その大切さを 無償の愛を 力強さを 絆を 命を



周りの誰でもない 犬であるニヌファに教えてもらった



よく飼っている動物を 家族の一員だと言うが



そんな簡単な言葉で彼を 言いあらわす事はできない



たとえ恋人や夫婦でさえも入ることの出来ない



心の奥底に入ってくることができた 唯一の存在



それが ニヌファだったからだ。

関連記事