2009年09月13日
★ニヌファへ

白く濁った右目と 昔と同じやさしい左目で
ひたむきに 迷いもなく 僕を見つめるニヌファ
お前と同じように心から喜んで
見つめ返すことが出来なかったお父さんを許してほしい
新しい傷のふくらみを見つけるたびに
腫れあがった左足の腫瘍を消毒する時
ポタポタと落ちる お前の血を見るたびに
心が萎えそうになった お父さんを許してほしい
時々 おこる後脚の痛みに悲鳴をあげながら
救いを求めて僕のもとにかけよるお前に
背中を撫でてやることしかできなかった
お父さんを許してほしい
寝ている僕の枕もとに 頭を乗せて横たわるニヌファ
暗闇の中に聞こえる 薬の副作用の荒い息
お前の背中に手を伸ばすと
毛の柔らかさと 命の温もりを指先に感じる
夜の影に隠れて 泣きだしそうだった
弱虫なお父さんを許してほしい
お医者さんから もうどうしようもないと
痛みを抑えることもできないと言われ
「ニヌファを楽にしてやってください」という言葉を口にした時
お父さんは心臓をナイフでえぐられるような気持ちだったよ
注射をうたれ すぐにお前が静かになったとき
お母さんは 大声で泣いていたんだよ
「ニヌファ! ニヌファ! 大好きだよ!
本当によく頑張ったね
こんなに痛い思いをして なんにもできなくてごめんね」といって
母さんはずーっと大きな声で泣いていたよ
周りの人たちも母さんの姿に もらい泣きしてた
火葬場からお前の遺骨をもって家に帰るとすぐに
お前の薬箱や お前が飲んでいた薬も全部捨てたよ
あんな物 見たくもなかったよね
お前の為に お父さんが
オジーやオバー達に これからうちの大事な息子が
そっちに行きますから お願いしますと頼んでおいたから
天国に行ったら オジーやオバーが待っててくれるだろう
「ニヌファです よろしくお願いします!」と
元気な声であいさつをしなさい
天国では お前は元の健康な体になって病気もなくなるから
思いっきり走り回って遊ぶといい
オジーやオバー達の言う事を聞いていい子にしていなさい
病院で泣いているお父さんとお母さんに
「こんなに思ってもらってこの子は幸せね」と
知らないおばさんが言ってたけど
それは違う
幸せだったのは お父さんとお母さんだ
病気のお前の世話をしていたことが
どんなに幸せなことだったか
お父さん達は 今更ながら そう思うんだよ
お前が亡くなった次の日
お父さんは 家にいるのが怖くて
夜まで母さんと 外を歩き続けたよ
何度も何度もお前の話をしては 涙が止まらなかった
母さんは ずっと注射や手術に頑張ってきたお前が
最後に なんであんなに痛い思いをしなきゃいけないのか
世の中おかしいと 泣きながらすごく怒っていたんだよ
お前と散歩した道も お前がトイレに使っていた駐車場も
今はすべてが からっぽに見える
お前と散歩した一歩一歩が お前が踏む枯葉のカサカサという音が
何度も何度も 嬉しそうに振り返るお前の姿が
とても愛おしく 幸せだったよ
お父さんの心は スポンジみたいにゆっくりと
お前を失った悲しみと苦しみがしみてきて
どんどん どんどん重くなっていくよ ニヌファ
ニヌファ お父さんはどうしていいのか分からないんだ
こうやってお前に手紙を書けば
少しは 気持ちが落ち着くのかと思ったんだけど
どんどん どんどんお前に会いたい気持ちが大きくなって
お父さんは おしつぶされそうだよ
ちょっと先になるかもしれないけど
お父さんや お母さんが年をとって そっちに行く時は
いつものように お前が一番先に走って迎えに来ておくれ
その時は ニヌファの好きだったみかんを持っていってあげよう
ニヌファ お前がいなくてさびしくてたまらないよ
Posted by ★ニヌファ at 18:33│Comments(0)
│★ニヌファ