2011年03月04日

★離れがたい想い

★離れがたい想い

























嫁の父親は配管の仕事をしていたが

この不況で仕事がなくなり

しかたなく警備の仕事を始めた

嫁の実家のマンションは

15~16年ほど前に買ったマンションだ

いい歳で購入したマンションだけに

月々の支払も大きかった

仕事が好調だった頃は問題なかったが

今の状況では むずかしかった

マンションを売った時に借金だけ残らないように

5年ほど一緒に住んでくれないかと

しばらく前から嫁の母親に頼まれていた

嫁の両親には僕たちもかなり世話になったし

娘の事もかわいがってくれていた

苦しいときに知らぬ顔はできなかった

嫁の両親と同居することにしたのだが

とてもつらいのは 住んでいたアパ-トへの愛着だ

ニヌファを飼うために 見つけた場所で

静かで緑も多く 娘の為にも環境がいい

なによりニヌファの思い出がつまっていた

ニヌファが生後3ヶ月で初めて

我が家に来た時に迎えた玄関や

小さかったニヌファが顎と前足を使って上った階段

お風呂の後にニヌファが日向ぼっこしたベランダ

一緒にランドマークの夜景を眺めた窓

小さかった頃はソファーの下で寝ていたが

大きくなってからは体が入らず

顔だけソファーの下に突っ込んで寝ていたリビング

寝室のニヌファのお気に入りの窓の下

具合が悪くなってから 咳をすると

よく鼻血が飛び散った 階段側の壁

動かなくなってきた足を

引きずりながら上り下りした階段

夜中にトイレに行ったとき

倒れて動けなくなってしまったニヌファを抱いて

途方に暮れた駐車場

痙攣が起きて鼻血を流すニヌファを必死でなでながら

嫁に電話した玄関前

いつもいっしょに通った病院への道

仕事帰りの僕を迎えにニヌファがかけてきた

アパートへと続く金木犀の香りがしていた

保育園よこの坂道

あまりにも多くの思い出が詰まっていた

引越の業者が荷物を全て運び出した空っぽの部屋

なんだか 狭く感じた

嫁と部屋の掃除をすませると しばらく二人

ぼんやりと 部屋を眺めていた

「ニヌファ 引越しだよ」

ニヌファの骨壺を入れた背中のリュックに

すこし振り向きがちに 僕は声をかけた

たとえ亡くなったニヌファが僕たちとともにあるとしても

思いでの詰まった場所を離れる気持ちは

とてもつらいものだ

ここでニヌファを育て ともに暮らし

病気と闘い そしてニヌファを亡くした

この場所への思いをどう言葉にすればいいかわからない

あまりにもニヌファの匂いが染みつきすぎている

ここを離れる僕たちは 胸が張り裂ける思いだ

心の中にニヌファだけの場所がある

そこを訪れるたびに僕は

沢山の思い出を手にしては

笑い 泣き そして愛おしくて抱きしめる

どんなに泣いても願っても 取り戻せない物がある

悔やんでも 後悔しても取り返しのつかないこともある

それが現実だ 変えることはできない

日々を泣きながら暮らしている訳ではない

明るくなるたけ笑って生きていこうと努力している

嫁や娘や なにより自分自身の為に

でも心の奥に埋めようのない喪失感がある

一生埋めることのできない喪失感が

少し暖かい風が吹く

保育園横の いつもの坂道を

嫁と見えないニヌファと共に下った

ニヌファが元気だったころの 

いつかの散歩の時と同じように






同じカテゴリー(★ニヌファ)の記事
★ 合図
★ 合図(2017-09-21 18:46)

★道しるべ
★道しるべ(2016-06-10 13:52)

★迎え
★迎え(2012-08-07 21:48)

★永遠の花
★永遠の花(2012-04-10 09:28)

★ニヌファへの手紙
★ニヌファへの手紙(2011-08-25 22:57)

★ 永遠の星
★ 永遠の星(2010-08-16 09:25)


Posted by ★ニヌファ at 22:56│Comments(0)★ニヌファ
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。