★運動会

★ニヌファ

2016年10月18日 17:34






「走るの遅いから嫌なんだ…」

夕食時に娘が今度の運動会での

徒競走が嫌だと話した

「いつもビリになるからやだよ 

こないだ運動会の練習のときもビリで

1位のゆみちゃんが走り終わってすぐに

りみを見てあっかんべーしたんだよ…」

「りみが走ってるのをパパも見たことあるけどさ

なんか嫌々走ってるよな

どうせ負けるから走りたくないみたいなさ

あのな 運動会でパパやママが見たいのは

りみが一生懸命頑張ってる姿なんだよ

順位は全然関係ないんだよ

パパ 高校生の頃に運動会で

100メートル走に出ることになってさ

パパ以外の選手が全員陸上部だったんだよ

そんでスタートラインに立った時

パパのクラスのみんなが

あーもうダメだ あいつビリになるよって

言ってる姿が見えたんだよ

なんだか パパ頭にきてさ

くそ!見てろよって思って

足が取れちゃうぐらい一生懸命走ったら

三位になったんだよ

パパのクラスはすげー盛り上がってさ

ざまー見ろってパパ思ったんだよな

だからりみも 走るときにさ

一生懸命走って勝つんだっていう気持ちで

パパ 頑張って欲しいんだよ

一生懸命走ってビリでもかまわないんだよ

りみが全力を出して走ってる姿が見えれば

パパとママはそれで幸せだからさ

まあ 頑張れよ!」

娘は運動会で頑張ると約束してくれた

運動会当日は晴れの予報だったが少し肌寒かった

色々な競技やダンスを見ていたが

娘の徒競走が気になってしょうがなかった

そして徒競走の時間が迫ってきた

握り締めたビデオカメラ越しに

緊張した顔の娘が

スタートラインに立つのが見えた

「りみー!!がんばれー!!」

嫁のひときわデカイ声がグランドに響いた

「りみー!!!」僕も大声で叫んだ

パーンというピストルの音と共にスタートした

僕はのぞいていたビデオカメラから目をはなし

走っている娘を大声で応援した

彼女は ただ前だけを見つめ

一生懸命に突っ走っていた

以前に見たあきらめの顔でなく

一心不乱に勝負に臨んでいた

「りみー 行け!行けー!!」

カーブを曲がりゴールへと走ってくる

娘の顔は真剣そのものだった

親たちの歓声の中、ゴールに娘が飛び込み 

その結果は なんと3位だった!

ゴールそばの順位別に座って待機する場所で

娘が嬉しそうに僕に手を振っていた

僕は握りこぶしの親指を突きたて

娘にやったぞ!の合図を送ると

娘も親指を立て僕に合図を送り返した

最高の瞬間だった

親バカで申し訳ないが

ずっと練習でもビリだった娘が

あきらめず一生懸命走りきった事を誇りに思う

その日の夕飯はひときわにぎやかだった

「パパ あのね ゆみちゃんビリだったんだ」

練習時に1位でビリの娘にあっかんべーをした

同じグループで走ったゆみちゃんという子が

ビリになったと教えてくれた

「きっとその子も ビリの子はこんな気持ちに

なるんだって分かったんじゃないかな」

僕はビールで娘と嫁が麦茶のグラスを持つと

「今日は りみが一生懸命頑張って走って

なんと3位になりました それを祝ってかんぱーい!」

そして娘の耳元で僕は小さな声で

「ゆみちゃんのビリにも乾杯」と言って

ビールの杯を持ち上げた上げた。









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