★プチ旅行
ここ最近 ぜんぜん遠くない近くの町の
ホテルに宿泊するプチ旅行がマイブームだ
ホテルといっても豪華なホテルでなく
ビジネスホテルのような
とにかく安いホテルだ
何故そんなことをするようになったかと言うと
たとえば電車で20分~1時間の場所の町で
遊んでいて遅くなると帰らなければいけないが
何かせわしい気がしたのだ
その街に宿泊してしまえば
ゆっくりその街を楽しめると思ったのだ
特に何か見どころのない街でも
ブラブラと散歩したり
その街の地元で人気の定食屋とか
散歩の途中で見つけたパン屋とか
ハワイアンが流れているような
時代遅れの商店街とか
古臭い喫茶店とかが好きなのだ
その街で宿泊し朝目を覚ますと
普段知っていた街とは
また違う発見をするものだ
先日も横浜から電車で一時間ほどの
熱海にホテルをとった
まあ僕のプチ旅行からすると
少し遠い気がするがホテルも平日で
親子三人でも格安だったからだ
チェックインまでの時間
熱海の海岸やすたれた商店街を散歩したりした
何十年も前に時が止まったかのような喫茶店や
その喫茶店に併設された
これまた時代遅れのオモチャを
販売しているコーナーは
僕の心と共に五歳の娘のハートを撃ち抜き
30年くらい前でもどうかと思える
安っぽいレーザーガンを模した銃で
電池を入れると時代を感じさせる音と共に
おかしな光がぐるぐる回る銃を
50円で購入し娘はご機嫌だった
そしてフニャフニャの10㎝ほどのおかしな弾を
撃ち出すことのできるこれまた安っぽい
ライフルも同時に購入した
女の子なのに銃を二丁も購入し
いったい何に備えようとしているのか
娘の未来に不安を感じる瞬間だった
ホテルにチェックインすると
ホテルの小さなプールで娘と遊び
その後、海が見える温泉に入った
部屋は僕たちが宿泊する日に
リニューアルが完了したとのこと
和室で12畳ほどの部屋できれいだった
部屋のベランダに出ると海が一望でき
遠くに見える初島に船が行き来するのが見えた
ホテルでは無料の飲み物もあり
なにより娘を歓喜させたのが
かき氷食べ放題だった
もちろんセルフサービスなので
僕はかき氷機のハンドルが抜けるほど
何度もかき氷をつくらされた
温泉に入りかき氷を食べて
購入した安っぽいおもちゃの銃で
遊んでいた娘も疲れて寝てしまった
僕と嫁はベランダに出ると夜の海を眺めた
普段は特に気にしていないが
こうしていつもの生活から少し離れると
毎日の暮らしに自分たちが
どれほど流されていたかがわかる
普段の生活からすこし離れリラックスし
家族で過ごすことは大切だ
普段見失っていた事や忘れていた事
大事な何かを発見することもある
なにより家族の思い出を娘につくれることだ
嫁の家は子供の頃、家族で旅行に行くことは
ほとんどなかったそうだ
学校の同級生達が家族旅行の話を
楽しそうにする度に寂しい思いをしたらしい
だから嫁は子供が出来たら
色々なところに連れて行って
自分のように寂しい想いはさせたくないと言っていた
その為旅行の計画を練るときの嫁は
本当に楽しそうにしていた
なにより僕達親が楽しんでこそ
子供も楽しめると言うものだ
彼女が大きくなった時
僕たちと行ったたくさんの思い出を
懐かしく思い出して欲しい
暗い海の遠く初島に明かりが見える
あの明かりの中にはどんな家族が
暮らしているのだろうかと思った
布団に入ると隣で寝ている娘の寝息が聞こえた
彼女の小さな手にそっと手を添えて
僕は静かに眠りについた
翌朝 ホテルのフロントの女性が
駅まで車で送ってくれた
電車の中でおもちゃの銃を手に
楽しかったと話す娘に
「実は…違う場所にあと一泊しま~す!」
突然の僕の発表に「やったー!」と
娘がおもちゃの銃を握りしめたまま
座席から飛び降りると
両手を上に突き出して喜んだ
その姿に僕も嫁も大笑いした
向かいに座っていた年配の女性が
娘の喜ぶ姿を見て微笑んだ
電車の窓には道路沿いのドライブインと
その後ろに広がる海の景色が流れていった
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