★Why Don’t You Go To Atami

★ニヌファ

2011年11月21日 21:34





























「熱海に行かない? 熱海いいと思うんだよね」


嫁が企んだような悪い顔で話しかけてきた


「和民?居酒屋の?」僕はドミノピザを


食べる手を止め聞き返した


「耳にサラミつまってるんじゃない?


熱海よ熱海!東洋のモナコよ!」


「ふるっ!死語じゃねーか!


それに熱海ってなんて言うか


すたれてるイメージしかないな・・・」


「そんなことないよ 行きましょうよ


熱海へ 東洋のモナコへ」


「東洋のモナコって言いたいだけじゃないの・・・」


嫁の熱海という地名以上に熱い想いに負け


僕は熱海に行くことになってしまった


それから嫁は色々熱海の情報やホテルを調べ


楽しそうに僕に話していたが


正直 旅行の前日まで僕はそんなに楽しみではなかった


「あれっ? 明日は月曜日だっけ?」


ぐらいにしか思っていなかったのだ


しかし人間とは不思議なものだ


「楽しみでしょ 楽しみでしょ」と言われ続けると


催眠術にかけられたかのように


なんだか楽しみなような気がしてきた


嫁の熱意とは裏腹に当日は雨だった


しかも夜につれて激しくなるとのこと


かなり出足でつまづいてしまった


イヤ 足がもつれて転んでしまった


ジトジトうっとおしい雨の中熱海に到着


着いたのがお昼だったので昼食をとるために


嫁がネットの口コミで調べた


お刺身のおいしいと人気の店に入った


お刺身の味は・・いたって普通だった


サバのみりん干しはとても美味しかったのだが


もともと完成した物を焼いただけなので


この店でなくともおいしかったと思われる


しかもお土産に買ったサバのみりん干しは


ノルウェー産と書いてあり


熱海とはまったく関係なかった


まあネットの口コミなんてそんなものだ


味なんて人それぞれだ


行列ができているから必ずおいしいって訳じゃない


「でも サバのみりん干しはおいしかったよね」


嫁が口答えしたらただじゃおかねーぞコノヤロー的な


威圧的な同意を求める視線で聞いてきた


「あっハイ おいしかったです」


嫁なのにうっかり敬語で答えてしまった


チンピラの理論だ


その後駅前の商店街を見物した


4歳の娘にせがまれ立ちくらみするほど


時代遅れのプラスティック丸出しの


ゴルフセットを買わされた


途中娘が疲れたからホテルに行きたいと


ぐずり始めたのだがチェックインまで


まだ1時間半もあったので


またまた嫁のネットでチェックした


商店街のパン屋さんに入り


イートインもあるので


チェックインまで休憩することにした


僕は明太フランスを食べたのだが


それはそれでおいしかった


嫁もうまいうまいとほおばりながら


リュックから熱海に関してネットで調べ


プリントアウトした膨大な資料を広げ


「ふむふむ なるほどね 


あーそうきたか」と一人頷いていた


お前は経済アナリストか!と


心のなかで突っ込みながら


僕はコーヒーを飲み時間をつぶした


ようやくチェックインの時間になり


ホテルの部屋に到着


さっそく屋上の展望風呂に行くと


ラッキーなことに一番風呂で誰もいなかった


雨の降る熱海の町と海の景色をながめながら


一人でのんびり風呂を楽しんだ


それから部屋でゆったり過ごしたが


部屋の窓を開けると雨の勢いが増していた


出来たばかりの貸切のお風呂に


アンケートに答えてくれれば入れると


フロントの男性が声をかけてくれた


まだ誰も入ったことのない新しいお風呂に


家族3人で入浴した


大きな窓を開けると夜の熱海の坂に建つ


ホテルやマンションなどの夜景と


海沿いを走る車が見えた


「あーいいわねーゆったりするよねー


そうでしょパパ」と嫁がまた


堅気とは思えないチンピラ目線で


僕に声をかけてきた


くつろいだお風呂に走る緊張感


緊張と緩和の繰り返しに


お風呂でなにかしら漏らしそうになった


精神的なダメージが泌尿器に影響を与えているに違いない


「まあ なんだウン ゆったりするよね」と


草食系男子のような曖昧さで逃げきった


夜は雨が激しくなったため


我が家の経済アナリストの提言で


近くにある有名な中華屋に行くことになった


餃子が有名な店で小奇麗な店内だった


さて話題の餃子の味は・・・


「これ うまいか?・・・」僕の問いかけに


嫁も「いうほどじゃないよね・・・


ありかなしかで言うとなしよね・・」


苦虫をかみつぶしたような顔で嫁が言った


店を出ると雨風が強くなっていた


「また来るかって言ったら・・もう来ないわね」


激しい雨の中 山岳救助隊のような厳しい表情で


嫁が捨て台詞を残して去っていった


ホテルに戻ると「リベンジよリベンジ!」と


嫁が怒鳴りながら屋上の露天風呂に行った


リベンジって本来復讐って意味なはず


何にやられて何を討つのか分からないが


さわらぬ神とチンピラにたたりなしだ


こっちもだてに旦那を何年もやっていないのだ 


翌日は昨夜の雨が嘘のように晴天だった


3人で熱海の街中をぶらぶらしたのだが


30~40年くらい前の古い建物やビル


団地や時代遅れの喫茶店や昭和レトロな物と


僕と嫁が興味を引くものが多かった


また熱海のすたれた感というかやられた感がある


ノスタルジックな感じも気に入った


昔は賑わってたんだろうなみたいな雰囲気や


「スナック喫茶くろんぼ」と言う名の


放送禁止というかクレーム確実の名前の店や


「エコノミー」としか書かれていない


ホテルなのか何なのかわからない建物と


僕たちのツボにはまる物が多かった


11時頃に娘がなんだか眠いと言ったので


熱海の海岸のそばのジョナサンに入り


ソファーで娘を寝かせ


僕たちはドリンクバーだけを頼み


熱海の海岸をボーッと眺めていた


海岸に打ち寄せる波や


テトラポットに打ち寄せては砕けて


海岸沿いの道路近くまでしぶきが飛び散る波


海岸を親子や恋人 リタイヤしたように見える熟年夫婦


犬を連れて散歩する人々など


2時間ほど眺めて過ごした


娘は目を覚ましたが熱があり


風邪を引いてしまったようなので


しかたなく熱海をあとにして横浜へと帰った


そのあとは病院へ行ったりと忙しかったが


あの熱海の街並みや海岸での時間は楽しかった


普通に観光をしたい方にはオススメしないが


僕たちのようにノスタルジックなものが


楽しめる方にはオススメだ


僕はまたあの熱海の街を散策したいと思っている


我が家の経済アナリストの指導のもとに


ところであなたの週末の予定は?









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