★凍てついた夜

★ニヌファ

2010年12月29日 20:45



















もうすぐ 新しい年になる


月並みなせりふだが


今年もあっという間だった


以前 独り暮らしをしていた時


大晦日に風邪をひき 


寝込んだまま年を越した


正月三日目に友人が訪れ


無精ひげの僕を見て笑った


その友人は僕がろくな物も食べていないだろうと


食べ物と飲み物を買ってきてくれた


「ほいっ!」と彼が差し出したそのビニール袋を


「サンキュー!」と言って僕は受け取った


男同士だと なんだか気恥ずかしいものだ


「俺のおばさんが川崎にいるから 


そこに遊びに行こうよ」と誘ってくれた


彼とは中学校からの仲だ


身長が小さいくせに 陽気で明るく


いつも元気でこっちまで元気になる


沖縄人とはこうあるべきだという見本のような男だった


僕たちは親友になるべくしてなった


高校を卒業すると彼は島を出て東京に移った


僕は2年ほど遅れて横浜に移った


二人でよく飲み歩いたものだ


男二人で京都 大阪 岡山と旅行も行った


女性の友人もたくさんいるのに


彼はいつも「いい人だけど・・・」で終わった


喧嘩だってしたこともある


でもすぐ仲直りした


やさしい男で 誰かに騙されても


人を信じる事を恐れなかった


僕が落ち込んでどん底だった時に


彼が僕にこう言ってくれた


「ニヌファ 人間どん底の時ほどプライドもたなきゃな


まあ 俺なんて もともと無いけどな(笑)」


普段はプライドなんて必要ない


でもどん底のときは 誰かの救いの手が欲しくなる物だ


誰でもそれは同じだが そういう弱い思いが


自分自身で立ち上がる事を邪魔することもある


自分を信じ立ち上がるためにプライドが必要だ


見栄や虚栄などではなく


プライドとはそういう物ではないだろうか


それを 彼が教えてくれた


彼の川崎のおばさんも明るい女性だった


みんなでカラオケで遅くまで盛り上がり


本当に楽しかった


帰りは電車もなくて バイクを借りて


友人と二人乗りで帰った


恐ろしく寒くて 二人で「寒い!寒いー!」と


大声で叫びながら帰ったのを覚えている


その友人は三年前に 嫁と子供を残し


脳梗塞でこの世を去った


時が過ぎるのは 早いものだ


年末で 少し感傷的になったのだろうか


今でも その夜の事を思い出す


二人乗りのバイクで走った


あの寒い夜のことを





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