★Big Wave
僕は コストコが好きだ
ご存じの方も多いと思うが
コストコはアメリカからきた
会員制の巨大なスーパーみたいな所だ
ただ普通のスーパーと違い売ってる量というか
サイズが日本のよりはるかに大きいのだ
食料品や電気製品 生活雑貨に洋服などを
扱う倉庫のようなところだとイメージしてもらいたい
アメリカの製品を安く扱っていて
お店をやっている人もよく買いに来る
そこで食べることもできるので 行くといつも食べるのだが
ホットドッグとお変わり自由の
Lサイズの大きさのドリンクがついて250円だ
でっかいピザもホールで1500円と安い
さて 今回の話しはコストコについてではないのだ
今 思いっきり膝カックンになった方
ここまでコストコをフューチャーしといてなんだそれと
怒りで振り上げた拳を どうかおさめて欲しい
その拳は政治不信と 注文してもなかなか出来ない
手際の悪い ほか弁屋のおばちゃんに落としていただいて
そのコストコから帰る時の話しなのだが
嫁と歩いていると なんだか少しお腹が痛くなった
じき収まるだろうと 甘くみていたのが悪かった
突然 腹痛の波が襲いかかって来た
やばい ウ〇チが漏れそうな痛みだ・・・
あまりの痛みに その場に立ちつくしてしまった
「どうしたの?」という嫁の問いかけに
「ウ〇チ 漏れそう・・」と息も絶え絶えに言うと
「ちょっと! 早くトイレ探さなきゃ この辺にトイレないかしら
ちょっと 早く歩いて!」と嫁が言った
「早くなんか歩けるかーボケー!」
この状況で早く歩くことは死を意味するからねー!
必死に我慢しながら 痛みの波が過ぎるのを待った
これまでの人生が 走馬灯のように過ぎてゆく
「ニヌファ ついにウ〇チ漏らす!」という
新聞の見出しのような字が 頭をかすめていく
初恋の思い出も 楽しかった遠足も
いままで生きてきた この何十年間もが
ついに 今日でおしまいだ・・・・
明日から 日陰の人生を歩いて行くのだ
一生 ウ〇チを漏らしたという 負け犬のレッテルをはられるのだ
もう 我慢できないから漏らしちゃおうかな?
イヤイヤイヤ 何言っちゃってるの チビッコか!
社会人だろ! ウ〇チ漏らしていいってどういう事?
死ぬ気になって我慢しろ
人間死ぬ気になれば なんでも出来るぞ
でもウ〇チは 自分の意思とは関係ないし・・
世の中には どうにもならない事があるんだ
そんな絶望と戦いながらも 痛みの波を必死に我慢した
少し収まって来たので チャンスとばかりに
速足で トイレのある場所を探して歩き回った
しばらく歩くと 偶然にも公園が見つかった
神は俺を見離さなかった
もうここまで来たら 漏らすぐらいなら
公園で野糞してやるもんね
誰かに見られたって 関係ないもんね
ウ〇チ漏らしてズボン ビチビチにして帰るぐらいなら
いつだって野糞してやるさ あーやっちゃうもんね
などと開き直っていると 先に行った嫁が走って戻ってくると
「トイレあったよ トイレ!」と叫んだ
限界まで来ていても トイレが近くにあると聞くと
そこまでどうにか たどり着こうと思ってしまうのだ
そこが動物とは違う 文明人のプライドなのだろうか
トイレまであと50メートルという所で
また痛みの波が 押し寄せて来た
立ち止って必死にこらえた
必死に耐えながらも 俺はやれる 頑張れる
我慢できるぞ お前の肛門は鉄でできている
お前はやれば出来る子だと 自分自身を励まし続けた
僕が女性なら とっくに出産していただろう
今なら 五つ子だって産めそうだ
痛みの波が 収まったのをみはからい
トイレまで猛ダッシュした
大人になってから これほどピュアな思いで走った事はない
箱根駅伝の学生よりも 熱かった
痛みの波と波の 間隔が短くなっている
呼吸法はヒッヒッフーだっけ フッフッヒーだっけか?
先生 生まれそうです!
ようやくトイレのドアに手を掛けた時
また痛みの波が襲いかかって来た
今度の波は かなりのビッグウェイブだ
トイレに入ると ベルトを外す手が震えていた
ズボンを脱ぐ動作が スローモーションに見える
頑張れ お前は便意の波を乗り切るサーファーだ
このビッグウェーブを乗り切れる たった一人の男
ボードを手に浜辺に出れば 誰もがみんな噂する
伝説のレジェンドサーファーだ
額に油汗を浮かべながらも 自分にそう言い聞かせた
お尻が 便座にくっつく10センチくらい前から
もう出ていたと思う それくらい切迫していた
全てが終わった後の安堵感は 言葉にできない
トイレの中で 僕はしばらく放心状態だった
トイレの中で正坐していたかもしれない
悟りを開いたと言っても過言ではない
何かに到達したに違いない それほどの状態だった
現実的には トイレに到達しただけだったが・・・
トイレを出ると「さっ 帰ろうか!」と外で待つ嫁に
爽やかな5月の風のようなフレッシュな笑顔で声を掛けた
何かを成し遂げた者にしか感じられない充実感
伝説の大波から生還した たった一人の男
それが この僕レジェンドサーファーだ
トイレから出て来た僕が なんだか少し大きく見えたと
後日談で嫁が そう語っていた
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