★愛の洞窟

★ニヌファ

2009年10月25日 10:13

















高校生の頃の話だ



ケンジ君という友人がいた



ケンジ君の家は商売をしていて



狭い島なので 商売の内容は言えないが



彼は家の商売をよく手伝っていた



ある日 ケンジ君が僕に相談があると言ってきた



「実は俺 Y子のこと好きなんだよ・・



ニヌファ Y子とは小学校の頃からの友達だろ?



なんとか 仲良くなれるチャンスはないか



力貸してくれないかな?・・・」



Y子とは小学校が一緒だった



背が小さく まじめで勉強がよくできる子だった



同じ高校になって 僕がよくY子と親しげに話しているのを



ケンジ君は よく見かけたらしいのだ



「別に かまわないよ」僕は即答した



ウインドサーフィンをやっている活動的なケンジ君が



学年一の真面目な子を好きになるなんて



僕は 意外な気がした



その後 みんなで海岸に遊びに行く計画があったので



ケンジ君の為にY子にも声を掛けた



その海岸には 洞窟があった



5分も歩けば すぐに出口に来てしまう短い洞窟だった



男女ペアでその洞窟に入ってみようと



高校生ならではの 浅はかな思い付きを実行した



枯れた木の枝にバイクのガソリンを染み込ませ



火をつけて それを明りにした



ひと組が終わると 次のペアが入るようにした



手を握って入る者もいれば 恥ずかしがるペアもいた



ケンジ君とY子を最後のペアにした



ケンジ君たちが 洞窟に入る時



たまたま懐中電灯が見つかったふりをして



それを 彼らにわたして洞窟に入ってもらう



そして洞窟の真ん中で電池が切れたふりをして



懐中電灯を消せば 真っ暗になり



Y子が怖がってケンジ君に抱きつくだろうとの



またまた高校生ならではの 子供じみた計画だった



ガソリンのせいなのか 燃えた木の枝のせいなのか



洞窟を出ると みんな鼻の穴が真っ黒だった



そしてケンジ君達に 計画どうり懐中電灯をわたした



洞窟の出口で 僕達は笑いながらしばらく待っていた



数分後 悲鳴が聞こえ 2人が洞窟から飛び出してきた



あちこち岩にぶつけ 傷だらけだった



ようやく落ちつたケンジ君に聞いたところ



しばらくはいい感じだったのだが



洞窟の真ん中あたりで明かりを消すと



Y子が悲鳴をあげて 飛びついてきたらしい



その拍子に懐中電灯を落としてしまい 



真っ暗な中 Y子の悲鳴がこだまして



それを聞いているうちに だんだんと怖くなり 



二人で真っ暗な中 岩にぶつかりながら 



命からがら 出口へとたどり着いたらしいのだ



バカバカしい結果だった



その一件以来 ケンジ君とY子をくっつける作戦は



一時 休止状態になった



その後 Y子が入院したとのニュースを耳にした



Y子の友人に どこが悪いのか尋ねても



なんだか 全員フガフガして答えてくれない



頭にきて その友人の女の子をとっ捕まえて



強引に理由を聞いたところ



生理痛がひどいためとの事だった



そしてケンジ君も入院のニュースを聞いたらしく



病院に見舞いに行くと言い出した



僕は 一足先に病院に行くと 



Y子に入院の理由を僕が知っていること



またケンジ君が これから見舞いに来る事を告げた



Y子は恥ずかしさに死にそうな顔だったので



「うちの ねーちゃんも生理でよく入院するんだよ」と



嘘を言って落ち着かせた



しばらくすると 花束とゴルゴ13の文庫本を5~6冊抱えた



ケンジ君が 神妙な顔で病室を訪ねてきた



入院してる しかも女の子になんでゴルゴ13なのか?



いかに暇つぶしに読む読み物とはいっても 



入院患者に殺し屋のマンガは いかがなものか・・・



「大丈夫か? どこが悪いの?」とケンジ君が尋ねると



まるで 家族でテレビを見ていたら



ラブシーンがいきなり始まってしまい 



理由もなく台所に行き 冷蔵庫の扉を開けたりするような



不自然な いたたまれなさな感じに 



病室にいた女の子達がなったので



「勉強のやり過ぎで 過労なんだって」と



僕は 適当な事をケンジ君に行った



「Y子頭いいけど そんなに頑張ったら体に良くないよ」と



心配そうに ケンジ君がY子に言った



僕が 25~27歳ぐらいの時だったか 確かではないが



横浜にいる僕の所に 島にいる友人から連絡があった



ケンジ君とY子が結婚したとの話だった



そのとき 真っ先に高校時代の



あの洞窟での バカバカしい出来事を思い出した



僕は 思い出し笑いをしながら



「俺の計画も ずいぶん時間がたったけど



まんざらじゃなかったんだな」とつぶやいた。

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