2013年06月23日

★ベランダの青い空


★ベランダの青い空





昼休みに携帯が鳴った


電話を取ると嫁からだった


嫁の友人が亡くなったとの事だった


以前僕は「起こって欲しい奇跡」という


記事を書いたことがある


嫁の高校時代の同級生で


乳がんになり旦那さんが


癌保険で出たお金を使い込み


浮気もしていたので離婚した


子供が二人いたので障害者の施設で働いたが


その後再婚することが出来た


癌で二人の子供がいる女性と


結婚を決意した素晴らしい旦那さんと


巡り会う事が出来た


という内容の記事だった


その彼女が亡くなったので


仕事帰りに同じ高校の同級生たちと


通夜に行くと嫁が電話で泣きながら話した


自分があとどれくらい生きられるのか


残される子供たちの事を思いながら


癌と戦ってきた彼女と彼女の家族の気持ちは


僕などには想像することもできない


亡くなった彼女の旦那さんと二人の子供たちが


まるで本当の家族のように仲が良かったと


通夜から帰った嫁が話した


家族とは血でも理屈でもない


たとえ血の繋がりが無くても


お互いが家族だと思えば


その絆があればそれが家族だ


僕はそう思う


最後は家に帰りたいという本人の希望で


自宅に帰り家族に見守られながら亡くなった


本当に家に帰りたかったんだろうね


家族が待つ家に・・・


嫁がぽつりと言った 


僕が働く介護施設の午後


入居者の中田さん(仮名)の車イスを押して


施設のベランダに出た


時計の針は午後4時を回っていたが


まだ日が照りつけていた


住宅街に建つこの施設は


目の前の道路を車が行ききするものの


わりあい静かな環境だった


何棟か建っている築40年ほどの


団地のベランダに布団が干してあるのが見える


両手を広げ深呼吸をすると


外の空気を胸いっぱいに吸った


僕はやりきれない気持ちだった


ベランダで花の植木鉢を見ていた中田さんが


近所で犬を飼っていたという


おじさんの話をしてくれた


その犬をとてもかわいがっていて


よく散歩する姿を見かけたそうだ


その犬が病気かなにかで


亡くなってしまった


おじさんはとても気落ちしたそうだ


しばらくすると犬と散歩していた道を


犬の骨壺をもって散歩するおじさんの姿を


見かけるようになったそうだ


「可哀そうにね 亡くなっても散歩に


連れてってあげたかったんだろうね」


と中田さんが言った


僕の気持ちとは相反して


空は青く広がっていた


それは憎たらしいほどに


澄み切ってどこまでも高かった


少し生暖かい風が吹き抜ける


ベランダの手すりにもたれながら


「たまんねーなー」と僕が言うと


「たまんないね」と中田さんが答えた















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Posted by ★ニヌファ at 08:54│Comments(0)★日々の雑談
 
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