2013年02月22日
★雪

僕が雪を初めて見たのは
受験で東京に来た時だった
東京に来るのも初めてで
電車の路線図と地図を握りしめ
不安と好奇心でいっぱいだった
羽田で飛行機を降りた時
寒いだろうと沖縄でよく着ていた
MA-1とTシャツとジーンズ姿だったが
沖縄では体験したことのない寒さに
すぐに何枚か服を買い重ね着をした
予約していた新宿の駅前のホテルに着くと
前もって調べていた場所や
行きたかった店に出かけたものだ
親には悪いが正直受験は二の次だった
東京の町は刺激的で楽しかった
我を忘れて色々見ていると
手の指や足先が寒さでキンキンになった
手袋を買うという発想が
沖縄生まれの僕には無かったのだ
大学に入学してからも
寒くて部屋にコタツを置いたのだが
寒くて寒くて仕方がない
大学の友人に話したところ
「なんでストーブ買わないの?」と言われ
はっと気づいたくらいだ
寒さに対して無防備というか
どう対処していいのか分からなかったのだ
原宿の駅前に服や雑貨を売っている
屋台のようなお店がたくさんあって
そこで帽子を見ている時に
何か白いものがパラパラと降ってきた
何が降ってきたのかと空を見上げ
それが雪だと知った時
「うわー」と思わず声が出てしまった
これがTVで見たことのある雪かと
しばらく空を見上げていると
お店のおじさんが「雪初めて見るの?」と
空をぽかんと見上げている僕に声をかけた
「はい 沖縄から来たんで初めて見るんです」
そう答えると僕はようやく空から目線を下げた
「へぇー沖縄か 沖縄は暖かいところだもんね
どう?沖縄と違って寒いかい?」と
店のおじさんに尋ねられたので
「ケツがもげるかと思ったほど寒いです」と答えると
店のおじさんが座っていた椅子から
転げ落ちるほど大爆笑した
そしてわざわざ沖縄から来たからと
帽子を1000円引きで売ってくれた
あれから何度も僕は雪を見た
アルバイト帰りの深夜の駅のホームで
凍える手に息を吹きかけながら見たり
当時付き合っていた恋人と
傘を差し雪の中を一緒に歩いたり
友人たちと雪だるまを作り
雪合戦でバカ騒ぎをしたり
結婚し赤ん坊だった娘を抱きながら
窓の外に降る雪をみたりした
そういえば愛犬のニヌファが生きていた時
バーニーズはスイスの犬なので
その為雪が大好きなのかしらないが
大喜びで雪の中を駆け回っていた
雪でボールを作りニヌファに投げつけると
近くに落ちた雪の玉を口にくわえたのだが
噛み砕かれ無くなった雪のボールを
首をかしげながらキョロキョロと
探し回っていた事を覚えている
雪を見た情景は色々だった
孤独な時も 幸せな時もあった
南国生まれの僕には今でも雪が降ると
なんだか意味なくわくわくするのだ
空から舞い落ちる雪を見ていると
ちっぽけな南の島から
不安と期待に揺れながら
一人で都会に出てきて
あの原宿の駅前で降ってくる
雪を初めて見た時の
あの感動を今でも思い出す
Posted by ★ニヌファ at 22:09│Comments(0)
│★日々の雑談