2012年07月13日
★夏の夜の記憶

中学生の頃だ 夏の夕方に
寝てしまい9時ごろに目が覚めた
ふらふらとなぜか二回のベランダに出た
おかしな話だが感覚が妙に冴えていて
普段は自分自身の中にあるはずの感覚が
自分自身の外に出て周りの色々なものや
外から自分自身の存在も感じることが出来た
夜空を見上げると星空が広がっていて
それを見ていると自分の体が浮いて
そのまま星空に溶け込んでしまいそうな感覚に襲われ
怖くなって感覚を遮断してしまった
後にも先にもその一度だけだが
おかしな体験だった
スピリチュアルな話をしたい訳ではない
寝ぼけていただけかもしれない
ただ 夜にはほんの少しだけ
魔法がある気がする
夏の夜には特に…
子供の頃 夏の夜
家でスイカを食べていた
二番目の姉とスイカの種を庭先に飛ばした
ベープマットの香りがしていた
我が家は蚊取り線香もあったのだが
ベープマットがやけにあった
あの四角いマットのようなものが
くるまれたシートがびろびろと
つながった部分を切り取り線から切り取り
熱くなった鉄板のような部分に置くと
あの独特の香りがした
朝になり使い終わる頃には
青かった四角いマットが真っ白になっていた
一番目の姉がスイカを食べる僕の横で
パチンパチンと音を立てながら
足の爪を爪切りで切っていた
オヤジはビールを飲みながらテレビで野球を観戦し
おふくろは台所で皿を洗っていた
虫の声と隣の家のラジオの音が聞こえていた
なにげない夏の日の記憶だ
先日 夜、娘と嫁と家でスイカを食べていた時
ふと その事を思い出した
スイカを食べる娘を見ながら
大きくなったら今の僕のように
子供の頃の このなにげない夜の風景を
彼女も思い出すのだろうか
そう思うとなんだかこの一瞬が
とても愛おしく感じてしまった
「私が子供の頃 夏の夜に
パパはビールを飲んでいてね
私はお気に入りのお花のワンピースを着て
大人用の椅子に腰かけ
足をブラブラさせながら
ママとスイカを食べていたの
蚊取り線香の匂いがしていたわ
とても穏やかな夜だったの
パパがママに私が大きくなったら
このなんでもない夜の事を
子供の頃の記憶として
思い出すのかなと話していたわ」と
娘が将来 誰か大切な人に
話してくれる日が来るのだろうか
特別な事やサプライズや記念日でなくても
何でもない夜の記憶を
ずっと覚えている事があるものだ
家族が何事もなく過ごす
平凡な夜の記憶は
本当は平凡などではなく
自分では気付かなくとも
それは特別で幸せな
夏の夜の家族の記憶だ
Posted by ★ニヌファ at 21:03│Comments(0)
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