2010年10月11日
★ 龍之介

嫁の祖父と祖母が犬を飼ったのは
7~8年ほど前の頃だ
年寄なので子犬から育てるのは大変だと
成犬になった柴犬を
嫁の母親の兄弟がもらってきた
工事現場の近くをウロウロしていた野良犬を
拾ってきたのだと言っていた
その犬に龍之介という名前を付けた
龍之介は虐待を受けていたのだろうと
龍之介を拾ってきた 嫁の母親の
2人いる男兄弟の弟が言った
龍之介は 人に対して不信感と恐怖を持っていた
おどおどして 目を合わせようとしなかった
それでも 嫁の祖父と祖母と
嫁の母親の2人の男兄弟にはなついた
嫁と龍之介を散歩に連れて行ったことがある
やはり目を合わせようとはしなかった
龍之介はたまに家を抜け出しては
勝手に散歩に行くことがあった
困った事に 嫁の祖父や祖母は
龍之介に 自分たちの食べ物を
なんでも分け与えたり
龍之介のためといって
焼き鳥やチーズを買ってくる始末だった
おかげで龍之介も少し太り気味だった
ある明け方 龍之介が外に出たがっていたので
嫁の母親の男兄弟の兄が外に出してしまった
ところが いくら待っても帰ってこない
心配した 弟が車で近所を探し回ると
道路で車に轢かれ死んでいる龍之介を見つけた
龍之介が好きな犬がいる家のそばだった
その犬に会いに行く途中に
車にはねられたのだろう
龍之介の亡骸をもって帰ると
「なんで 外に出したんだよ兄貴!」と
弟は兄を怒鳴りつけた
庭に龍之介の亡骸を埋め
その上に石を置き 龍之介の墓と彫った
弟はその晩自宅に帰り
息子と龍之介のことを思い
泣きながら酒を飲んだ
嫁の祖父や祖父母は とても悲しんだ
生きがいを無くしたからだろうか
ふさぎ込んでいた祖父は認知症になり
その後 老人ホームに入所した
嫁の祖母は まだ自宅にいるが
彼女も追うように認知症となり
ホームヘルパーの世話になっている
自分の娘や嫁のことも 時々分からなくなった
ある午後 ぼんやりと外を眺めていた祖母が
「龍之介の声がする・・・」とつぶやいた
嫁の祖父母の家に行くと
僕は娘と庭先の龍之介の墓に手を合わせる
虐待など受けず 信頼できる飼い主に
生まれ変わったら 出会えるように
そして出来る事なら
生まれ変わった嫁の祖父や祖母と
また出会えることを願いながら
Posted by ★ニヌファ at 09:21│Comments(0)
│★日々の雑談